「テスラ」が時価総額で「トヨタ」を抜く
自動車米国を代表する自動車メーカーといえば、GMではなく、テスラになりました。テスラの時価総額が2020年7月にトヨタ自動車を抜いて2倍超に達しています。トヨタの豊田章男社長は「現在の株式市場の評価では完全に負けている。テスラは大きな企業価値を生んでいる。学べる点が多々ある」と述べました。
2019年の自動車販売台数はトヨタ自動車の約1000万台(グループ全体)に対して、テスラは37万台と29分の1に過ぎません。純利益もトヨタ自動車の約2兆円に対して、テスラは8億ドルの赤字でした。イーロン・マスクCEOは、大風呂敷を広げるのを得意にしていますが、世界販売台数を2021年に100万台、2030年に2000万台に増やす計画を明らかにしています。
テスラは中国での販売増加や温暖化ガスの排出枠売却が寄与し、2020年4〜6月期に1.04億ドルの利益をあげ、創業17年にして初めて4四半期連続の黒字を達成し、12月にS&P500に採用されました。
顧客満足度を調査するコンサルティング会社のJDパワーによると、テスラは品質調査で最下位だった一方、魅力では首位で、熱狂的ファンが多くいます。テスラは自動車株ではなく、テクノロジー株として評価されているという指摘がある一方、GAFAと違ってテスラはプラットフォーマーにはなりえないとの意見もあります。EV普及の鍵になるバッテリーの開発スピードや価格低減に対する見方が分かれています。
「ズーム」の時価総額は「ブイキューブ」の8倍
日本のビデオ会議システムのブイキューブの時価総額は約860億円に留まりますが、グローバル展開するズームの時価総額は、その160倍の1360億ドル(約14兆円)に達しています。ズームの2020年度2Qの売上は前年同期比169%増の3.3億ドルと急増しました。日本企業のビデオ会議ではブイキューブより、ズーム、シスコのWebex、マイクロソフトのTeamsを使う企業が多くなっています。
ウィズコロナでデジタル・マーケティングの重要性が一層高まっています。日本でセールスフォース・ドットコムの導入支援を行なうテラスカイの時価総額は約610億円ですが、その親元であるセールスフォース・ドットコムの時価総額は2240億ドル(約24兆円)に上ります。
電子認証システムのeSingnatureを運営するドキュサインには世界で1億人のユーザーがいて、2020年2Qの売上が前年同期比45%増の3.4億ドル(360億円)に達しましたが、赤字継続でした。ドキュサインの株価は上場来高値を更新して、時価総額が430億ドル(4.5兆円)に達しました。日本で同様の事業「クラウドサイン」を展開する弁護士ドットコムも上場来高値を更新しましたが、時価総額はドキュサインの約15分の1です。
日本ではエムスリー、メドレー、オプティムがオンライン診療の三雄として株価が大きく上昇しましたが、米国でもTeladoc Healthの株価が年初来約2倍に上昇しました。Teladoc Healthはまだ赤字ですが、2020年3Qの売上が前年同期比79%増の2.9億ドル(300億円)となり、素晴らしい成長を達成したと述べました。同社はJ.D.Power2019から“direct-to-consumer telehealthprovider”で1位の評価を受けて、世界175カ国で40超の言語でサービスを展開しています。
米国テクノロジー企業は初期段階から、英語やグローバル人材の強みを活かして、グローバル市場を念頭に置いた成長戦略を描く企業が多くなっています。
国内市場で成長するIT企業は日本にもたくさんあるものの、日本語の制約もあり、最初からグローバル市場を目指すIT企業は少なくなっています。平井卓也デジタル担当相も、日本から世界市場を席捲するようなプラットフォーム企業が出てくる可能性を悲観的に見ています。マザーズのIT企業に投資するのもいいですが、グローバルに成長しそうなナスダックの中小型IT企業へのほうが中長期的なリターンが高そうです
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