外壁塗装の苦情やトラブルが増えている
最近、テレビやラジオのCMなどでも外壁塗装がよく宣伝されるようになりました。また、飛び込み営業のスタイルで地域の家々を回り、外壁塗装を提案する訪問販売の業者も増え、外壁塗装がより身近になってきました。このような環境を踏まえると、業者に依頼するアクセスは以前よりも良くなっているといえますし、実際に外壁塗装の工事件数は年々増加しています。
筆者のような外壁塗装業者にとってそのような喜ばしい状況があると同時に、外壁塗装の苦情やトラブルも増えています。
外壁塗装を含むリフォーム工事のトラブル相談件数は、2010年には5000件前後でしたが、それから約10年の間に1万件以上に倍増しています。塗装会社を経営する筆者の耳にもそうしたトラブルについての話がたびたび届くようになりました。
「何度修繕しても雨漏りが続く…」予想外の原因
公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが発表したデータによれば、塗料の剥がれ、雨漏り、性能不足、塗料や外壁材のひび割れ、汚れといったトラブルが特に多く、これらはいずれも再度大掛かりな工事が必要になるものばかりです。
具体的にはどのようなトラブルがあるか説明しましょう。
●手抜き工事で塗料が剥がれてしまう
きちんと塗装を行えば、塗料は10年以上もちます。ところが、手抜き工事により数年で剥げ落ちることがあります。
手抜き工事は、必要な工程の一部を省くことにより、原価を抑えたり、工事を早く終わらせることなどを目的に行われます。
塗装は、下塗り、中塗り、上塗りの3度塗りが基本です。
下塗りは、中塗りと上塗りの塗料をきちんと壁に定着させるための下地処理の塗装です。中塗りは上塗りと同じ塗料を使うのが基本で、経年劣化によって上塗りが色あせてきたとしても、色やツヤのムラが起きないようにするための重要な工程です。
この手順をきちんと踏むことで、塗料は最低でも10年、長ければ20年くらいもちます。
しかし、手抜きをして「工事を早く終わらせたい」と考える業者は、下塗りと上塗りだけで終わらせます。そのせいで、本来なら10年以上もつはずの塗料が数年後に色ムラを起こし、見た目が悪化します。また、使用する塗料の量が少ないため、塗料がもつ防水性、防汚性といった機能が十分に発揮できず、家が傷むことになります。
●雨漏りが直らない
雨漏りは、屋根に穴が空いて起きるものと思っている人が多いのですが、外壁に原因があるケースも少なくありません。そのため、雨漏りの補修は、雨漏りの原因を特定するところが出発点です。
実は、ここが業者の経験を要するところです。
雨漏りの原因となる壁や屋根のひび割れは1カ所とは限りません。屋根と壁の両方から雨水が侵入し、その水が1カ所に集まって雨漏りしているようなケースもあるのです。
また屋根や壁にひび割れがなくても雨漏りが起きることがあります。
室内と外気の温度差が大きくなりやすい屋根裏や窓の付近で結露が起き、水滴が窓枠の木部を腐らせたり、結露が屋根下地の木部を腐らせたりします。
このような知識を前提としたうえで壁などを補修しないと、雨漏りは再発します。
実際、施工者が「雨漏りは屋根が原因」と先入観をもってしまい、「原因は屋根なのだから、屋根を塗り直せばよい」「傷んだ屋根材を補強すればよい」と考えた結果、雨漏りが再発するケースは少なくありません。
筆者が相談を受けたお客さんのなかにも、過去に何度も雨漏り修理を依頼したにもかかわらず、「雨漏りが直らない」と頭を抱えている人がいました。
現場を見させてもらうと、屋根材のひび割れや隙間という隙間のすべてにコーキングがべったり埋まっていました。
おそらく、前の外壁塗装業者が「屋根のどこかから雨水が入り込んでいる」と決めつけて、手当たり次第に隙間を埋めたのだろうと思います。
しかし、実際にはこの処置が雨漏りを悪化させていました。
筆者たちが屋根、壁などを調べたところ、この家の雨漏りは、屋根や壁の傷みではなく、結露が原因であることが分かりました。
結露を防ぐには外気と室内の温度差を小さくするなどの処置が必要なのですが、この家の場合はコーキングで隙間を埋めたせいで温度差が生まれやすくなり、結露がさらに起きやすくなっていたのです。
結局、この家の屋根は、隙間を埋めているコーキングをすべて撤去したところで、屋根下地の木部が腐っているため再塗装しても意味がなく、下地の木部からやり直す屋根の葺き替え工事になりました。
前の外壁塗装業者の知識が足りなかったため、雨漏りが直らないだけでなく、屋根塗装の費用に比べ何倍もの余計な修理工事が発生したのです。
●塗料や外壁材のひび割れ
塗料は紫外線や雨風にさらされ経年劣化します。通常は10年以上、見た目も機能も維持できますが、塗料の選定や塗装方法に問題があった場合、塗膜のひび割れや剥がれ、膨れのほか、急速な劣化が起きます。
また、塗装する際には壁の種類や状態をくまなく確認し、ひび割れや雨漏りを起こしそうな場所を補修します。しかし、施工者の知識不足・確認不足や手抜きによって補修作業が行われなかった場合、外壁材や目地のひび割れが悪化し、雨漏りの原因になることがあります。
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