トラブルの背景には、業界特有の「多重構造」もある
外壁工事には、多くのトラブルがつきものです。手抜き工事による塗料の剥がれ、直らない雨漏り、塗料外壁材のひび割れ、周辺への塗料の飛び散りといった汚れ、イメージしていた色と異なる仕上がり…。なぜこのようなトラブルが起きるのでしょうか。
手抜きする業者や悪質な業者に依頼してしまうのは、お客さん側の事情として、外壁塗装に関する知識が不足していることや、良い業者の選び方が分からないことなどが挙げられるでしょう。
また、トラブルが起きる背景には、業界の構造上の問題もあります。外壁塗装業界は、工事の依頼を受けた業者(元請け業者)が、その仕事を下請け業者に出し、下請け業者が、 さらにその下にいる孫請け業者に出すという、多重構造と呼ばれる構造になっています。
外壁塗装は、この構造で仕事が下請け、孫請けへと流れていくことがよくあります。お客さんは元請け業者の規模や実績などを見て「大手だから安心できる」「技術力があるはず」などと考えます。
しかし、多重構造で仕事が流れている場合、依頼した元請け業者が施工するとは限りません。元請け業者が下請け・孫請け業者に仕事を任せた場合、現場にはまったく別の業者の職人が来ることになります。
その業者が知識不足だったり、技術力のない業者だったりした場合、お客さんは結果として、信頼して任せた業者とは異なる、知識や技術力のない業者に依頼したことになるのです。
多重構造と中間マージンで「手抜き」が生じやすく…
多重構造でもう1つ問題なのが、元請け業者から下請け業者、下請け業者から孫請け業者へと仕事が流れていく過程で中間マージンが発生することです。
中間マージンは、実際の施工を任せるときに取る紹介料や仲介料などのことです。このお金の出どころは、依頼主が支払った工事費用です。つまり、中間マージンが発生するほど実際の工事に使えるお金が少なくなるということです。
例えば、工事費用が100万円だったとすると、元請けはそのうちの40万円を中間マージンとして受け取り、下請けの業者に60万円で工事を発注します。下請けの業者が忙しく対応できなかった場合などは、60万円のうちの10万円を受け取り、孫請けの業者に50万円で発注します。
お客さん側から見ると、工事代として払った100万円が、この点で50万円に減っています。さらに工事がその下の業者に流れると、工事に使えるお金が45万円になります。
もちろん、末端業者も45万のなかから数万でも利益を出さないといけないわけですから、仕上がりの質は下がります。
なぜなら、材料費も人件費も本来の半分以下になり、職人たちはとても足りない材料で工事を強いられますし、なにより、十分な休憩や手当を与えられないまま夜遅くまで働かされるためです。
職人からすれば、なにか失敗して工期が伸びてしまったら即赤字になる状況で、気持ちに余裕はなく仕事に熱意を注げる人は少ないはずです。
利益が出ているのは営業上手な元請けだけで、職人は薄利。モチベーションが下がります。熱意がもてないのですから、工事の質も下がるでしょう。
工事の最終的な仕上がりは、お客さんが元請けにいくら払ったかではなく、実際の工事自体にいくら使えるか、つまり業者の人件費や塗装の材料代にどれだけの予算が組まれているかによるのです。
多重構造と中間マージンは、手抜きが生まれやすくなる原因にもなっています。
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