【問題点1】長期資産としての投資ができない
土地の使用権(レッドブック)は、条件はあるものの、ベトナム人やベトナム企業であれば永久的に持つことがでます。そのため、資産形成を目的に活用されています。ベトナムには相続税がないため、永久使用権がついた土地は、次世代へ引き継ぐ重要な資産との認識がなされています。
しかし一方で、建物(コンドミニアム)の使用権(ピンクブック)は期限が決められており、期限を迎えれば建物を返還する義務が生じ、返還してしまえば当然、使用権も消滅してしまいます。この点がベトナム人にも周知されてきたため、資産形成を目的とした建物の購入は減少し、短期売却をする人が増えているのです。
【問題点2】高層ビル火災の影響
2018年3月深夜、ホーチミン市8区で発生した高層ビル火災により、13人の死者、28人の負傷者が出ました。のちの調査で、火災発生時にサイレンが鳴らなかったとの住人の証言が得られています。これが、就寝中だった住民たちが逃げ遅れて犠牲と原因のひとつと考えられているほか、自動消火装置と避難誘導システムが稼動しなかったことから、消防法違反で立件もされています。
その後も大事には至らなかったものの複数のビル火災が発生しており、高層ビル火災の不安を口にするベトナム人が増え、一時社会問題にまで発展しました。現在でも高層マンションへの入居を避ける人は珍しくなく、わざわざ低層階を選んで入居する人もいるなど、影響は続いています。当然、自身の入居用として購入する人も減っているのです。
【問題点3】短期転売を目的とした「転売屋」の増加
上記の【問題点1】にも記したように、2015年ぐらいまでは、住居用に購入するベトナム人も多くいましたが、2016年ごろからは短期転売を目的に購入する転売屋が急増しました。
この現象は加熱傾向で、2016年~18年は売出しと同時に物件が予約完売する状況が続き、それにともない、物件価格も急激に上昇しました。しかし、急激な価格上昇によって政府の規制がかかったほか、高騰する物件の続出により市場取引が低迷。その後の新型コロナの発生もあり、現在では市場に転売屋の投げ売り物件が溢れています。
外国人が投資できる環境になるには、複数条件あり
以下は、ベトナム人向け不動産売買サイトを用いて筆者が毎月分析しているデータです。2週間単位で状況を分析し、市場の売買相場や取引状況を分析し現在の不動産市場の見極めに使用しています。
ベトナムでは、不動産ニュースや専門家的な人の話、日本・ベトナム問わず不動産業者等々情報の信用性が担保できないため、実際の売出し情報の数字をもとにベトナムの不動産市場を分析しているのです。
最後に、これまでの分析を踏まえ、筆者は2022年(来年)まではベトナム人のコンドミニアム(アパートメント)購入は低迷すると予想しています。
市場の価格が落ち着き(新規物件売出し物件の売出し価格の引き下げ)、政府の開発規制の緩和、外国人の購入条件の緩和(棟の50%までの購入引き上げ)等が実施されないと外国人が投資する市場にはならないと考えています。条件が揃えば、2023年が底となり少しずつですが浮上していくことになるでしょう。
徳嶺 勝信
VINACOMPASS Co., Ltd.
General Director
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