「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

ふるさと納税のメリットは節税効果と「返礼品」

節税効果としては故郷も母校も違いはないのですが、ふるさと納税が一気に世の中に浸透した理由は、「返礼品」の存在にあります。

 

従来、地方自治体への寄付はすべてふるさと納税の対象になっていたこともあり(現在は総務大臣の指定が必要)、自治体どうしで返礼品競争が過熱しました。より魅力的な返礼品を用意した自治体に寄付が多く集まる構図になっていたためです。

 

先に、「ふるさと納税をうまく活用すれば、実質的な自己負担額を2000円に収められる」と説明しましたが、これは、納税者はふるさと納税を活用することで、2000円の自己負担だけで全国から魅力的な返礼品を受け取ることができるということでもあります。

 

ちなみに、返礼品をもらうと一時所得として課税の対象になるのですが、年間50万円を超えるような規模にならない限り、税金はかかりません。

 

いまは、ふるさと納税を簡単に実行できるさまざまなポータルサイトもありますから、自分がほしい返礼品を探して、そこに寄付をするということも可能です。

 

このように返礼品があることによって、ふるさと納税は納税者にとってひじょうにうまみのある制度となりました。総務省の発表によると、ふるさと納税が現在のしくみになる直前の平成26年度と比較し、いまは10倍以上の人がこの制度を利用しているとのことですから、いかに急速に世の中に浸透したかがわかります。

 

ただ、こうした過度な返礼品競争が問題視され、2019年(令和元年)6月1日から、総務省の指定を受けない地方自治体への寄付はふるさと納税の対象外となりました。

 

たとえば、返礼品にAmazonのギフトカードなどを用意して人気を集めていた大阪府の泉佐野市も指定から外れたので、いまは泉佐野市に寄付をしても寄附金控除を受けられなくなっています。(GGO編集部注:2020年6月30日、最高裁は「泉佐野市をふるさと納税制度から除外したことは違法」として、除外決定を取り消しました)

 

今後ふるさと納税を考えている人は、このような官公庁や自治体の動きや法改正にも注目しておいたほうが良さそうです。

 

一方、母校に寄付しても、ふるさと納税のような魅力的な返礼品が用意されているケースは稀です。モニュメントに名前が彫られたり、カレンダーなどの記念品が送られたりすることはあっても、高級和牛やフルーツ、米などを学校が用意するのは難しいでしょう。

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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