先週の米ドル/円は、一時109円割れ寸前まで下落したものの、週末には110円近くまで小反発しました。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は「109円割れに向かうかどうかは、米国株次第」だと述べています。一体なぜなのでしょうか。今回は、米ドル/円の今後の展開について予想していきます。

「米国株高」が米金利の下げ渋りをもたらしている

米国株は、NYダウが先週も最高値を更新するなど株高の流れが続いています(図表4参照)。株価は、金利上昇を嫌気して下落する局面があるものの、金利が低下すると好感して上昇に転じており、結果として株高傾向に変わりはありません。そんな株高が債券売りの一因となり、米金利の下げ渋りをもたらしているのです。

 

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
【図表4】NYダウと90日MA (2020年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

 

 

そういった観点からすると、米金利の「上がり過ぎ」修正が本格化するためには、株価がある程度継続的に下落することが必要だといえます。では、そんな株価の継続的な下落が起こる可能性はあるのでしょうか。

 

最高値更新となっているNYダウについて、90日MAからのかい離率を見ると、7%以上に拡大してきたことから、徐々に短期的な「上がり過ぎ」懸念が出てきていますが、極端に強いものではなさそうです(図表5参照)。

 

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
【図表5】NYダウの90日MAからのかい離率 (2010年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

これに対して、52週MAとの関係を見ると、少し印象が変わるかもしれません。NYダウの52週MAからのかい離率は、2000年以降で確認する限り、20%以上に拡大したことはありませんでしたが、先週末時点のかい離率は19%弱と、2018年1月以来の水準まで拡大しました(図表6参照)。

 

ちなみに、その2018年1月は、同かい離率の拡大が一巡すると、その後にNYダウは1割程度の急落に向かっています。

 

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
【図表6】NYダウの52週MAからのかい離率 (2000年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

 

52週間=1年ですが、過去一年とは、まさに昨年3月「コロナ・ショック」の世界的株大暴落が一段落した後からの株高が展開した時間と基本的に重なります。そんな「コロナ後」の株高は、過去一年の平均値を2割近くも上回るペースで展開していました。

NYダウが「継続的な下落局面」に向かう可能性も

似たような2018年1月からのケースを参考にすると、NYダウが1割程度の継続的な下落局面に向かう可能性もあります。実際に継続的な株安となれば、米金利の「上がり過ぎ」修正の低下も本格化する可能性が出てくるでしょう。

 

米ドル/円は52週MAをすでに1ヵ月以上といった具合に「長く」上回っており、これは経験的には上昇トレンドが展開している可能性が高いといえます。その意味では、先週にかけての下落はあくまで一時的な動きではないでしょうか。

 

そんな一時的な下落が、先週の109円までの動きで早速終わったのか、それとも109円割れに向かうのか。それを考える上で、米金利と連動性の強い、米国株と米ドル/円の関係に注目してみたいと思います。



 

吉田恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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