最高時速490kmを出せる場所などないが…「3億円高級スポーツカー」を買う意味 (※画像はイメージです/PIXTA)

他人より優位に立ちたいという欲求、言い換えると「相対的ニーズ」には限りがありません。このニーズによる経済の牽引は可能ですが、環境・資源といった問題が全地球的な懸念となっている現在、もう許されることではないでしょう。嫉妬・羨望を生むあざといマーケティング、それで成り立ってきたディストピアについて見ていきましょう。※本連載は山口周著『ビジネスの未来』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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「衒示的消費」と「必要による消費」以外の消費は?

19世紀先進国の「すでに基本的な問題を解決してしまった」人々による経済活動を観察してゾンバルトは「恋愛ゲームに基づく奢侈」が、あるいはヴェブレンは「成功者であることを誇示するための奢侈」が、経済を駆動していると説きました。

 

これら2つの考察はいささか極論のきらいはあるものの、たとえば今日の停滞社会にあってもヨーロッパのラグジュアリーブランドや高級スポーツカーのマーケットが堅調に成長して気を吐いていることを考えれば、両者の指摘がいまなお一定の説明力をもつものであることも認めざるを得ません。

 

実は、あのケインズも同様の指摘をしています。

 

「人間のニーズには限りがないと思えるのは事実だ。だがニーズには2つの種類がある。

 

第1は絶対的なニーズであり、周囲の人たちの状況がどうであれ、必要だと感じるものである。

 

第2は、相対的なニーズであり、それを満たせば周囲の人たちより上になり、優越感をもてるときにのみ、必要だと感じるものである。第2の種類のニーズは、他人より優位に立ちたいという欲求を満たすものであって、確かに限りがないともいえる。全体の水準が高くなるほど、さらに上を求めるようになるからだ。

 

しかし、絶対的なニーズは、限りがないとはいえない。おそらくは誰もが考えているよりはるかに早い時期に、絶対的なニーズが満たされ、経済以外の目的にエネルギーを使うことを選ぶようになる時期がくるとも思える。結論を述べよう。この結論について、じっくりと考えていくと、想像するだけで驚くべきことだと思えてくるはずである。

 

結論として、大きな戦争がなく、人口の極端な増加がなければ、百年以内に経済的な問題が解決するか、少なくとも近く解決するとみられるようになるといえる。これは将来を見通すなら、経済的な問題が人類にとって永遠の問題ではないことを意味する。」

 

J・M・ケインズ『孫たちの世代の経済的可能性』

 

ケインズの指摘は次の2つのポイントに集約されます。

 

1.ニーズには「他人に関係なく必要な絶対的ニーズ」と「他人に優越するために必要な相対的ニーズ」の2つがある。

 

2.「絶対的ニーズ」は近いうちに解決するが「相対的ニーズ」には限りがない。

 

ケインズがこの講演を行ったのは世界恐慌の最中の1930年のことなので、「100年以内に絶対的なニーズが満たされる時代がくる」という予言はほぼ的中したといってよいのではないでしょうか。

 

しかし、ではそのような「経済的問題が解決した後の世界」において、何が経済を牽引するのか。ケインズ自身はこの講演の中で明示的に答えを述べているわけではないのですが、上記の指摘を踏まえれば、その後の世界において経済を駆動するのは「他人より優位に立ちたいという欲求=相対的ニーズ」でしかないということになります。なぜならこのニーズは逆に「限りがない」からです。

 

ライプニッツ 代表 独立研究者
著作家
パブリックスピーカー

1970年東京都生まれ。神奈川県葉山町に在住。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史専攻修士課程修了。

電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。

その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』『ニュータイプの時代』(ともにダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。

(的野 弘路=撮影)

著者紹介

連載日本人はコロナ後の世界をどう生きるべきか

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

山口 周

プレジデント社

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか? 21世紀を生きる私たちの課せられた仕事は、過去のノスタルジーに引きずられて終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すことではない…

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