多くの家庭で、親の「老い」はいずれ直面する問題です。ファイナンシャルプランナー・安田まゆみ氏の『そろそろ親とお金の話をしてください 』(ポプラ新書)より年をとった親がものを捨てられなくなる現象への対処法について解説していきます。

筆者が必ずやっている「お別れの儀式」

洋服も同じです。母親というものは、娘が50歳を過ぎていたとしても「これ、物はいいんだよ。私は体形が変わっちゃって着られないけど、あんたなら、買い物に行く時にでも着られるんじゃないの」と言ったりすることがあります。

 

そういう時も感謝して「ええ、いいの? お母さん大事な時に着ていた服でしょう。体に合わなくて着ないのなら、私が着ようかしらね。でも、私もお母さんと同じ体形だからさ、着られないかも。そしたらお友達に聞いてみるよ。とりあえず、もらっておこうかな」という具合に答えていきましょう。

 

「噓も方便」です。

 

もらったものは、家に帰ってポンと捨ててもいいのですが、私はきちんとお別れの儀式をしてから捨てています。壊れた目覚まし時計を手に取って「噓をついてごめんね。ここでお別れです。長い間お父さんの枕元でがんばってくれてありがとう。お疲れ様でした」

 

と言って、分別ごみに出します。着られない洋服(一度は袖を通してみますが)に対しても「お母さんを守ってくれて、ありがとう」と言葉をかけてから捨てます。

 

これは、私なりのけじめ。古い物であったとしても、親に噓をついて引き取った物ですから、この儀式は私にとっては必要なのです。

 

でも、こうして1つでも2つでも子どもがもらってくれるというと、不思議なもので、親の方でも捨てものが増えていくんです。「こっちはさすがにあんたもいらないよね」なんて言いながら、捨てる気分になっていくようです。

 

子どもが、今まで持っていた理由(ストーリー)を聞いてくれたこと、自分が大切にしてきた物の価値を認めてくれたことで、するすると気持ちが解けて、物も手放せるようになるんですね。

 

物(物の価値)を認める

     ↓

物にまつわるエピソードを話す、聞く

     ↓

「あげる」と言われたらもらう。

 

これを2〜3回繰り返してみましょう。そうすることで、ほかの物も少しずつ手放してくれます。

 

こういうことをYさんに伝えて実践してもらったところ、見事成功。捨てるべき物はまだまだ残っていますが、不要な物を手放すことにお母さんの気持ちが向いてきた、とのことでした。

 

安田 まゆみ

元気が出るお金の相談所 所長

 

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そろそろ親とお金の話をしてください

そろそろ親とお金の話をしてください

安田 まゆみ

株式会社 ポプラ社

離れて暮らす親の老いは、子どもにとって心配の種。 そのひとつに「お金」の問題があるが、親子の間でもお金の話はなかなか聞きづらく、つい先送りにしてしまっている人が多い。 だが、もし親が認知症になってしまったら、…

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