親の「お金」を把握するためのテクニック
親の気持ち、健康状態がわかり、親とのコミュニケーションが円滑に進められるようになってきたら、いよいよお金についてです。預貯金、不動産や株、投資などの資産のほか、ローンなどの負債の有無や日々の収支の状態など、知っておきたいことは山ほどあります。
いずれも、病気やケガで入院をしたり、認知症になったなど、親の「いざ」という時に備えて、どうしても必要な情報です。ただ、切り出し方や話の順番を間違えると親は警戒し、せっかく地ならしをしてお金の話をする土壌ができたのに、その努力と時間が水泡に帰すことになりかねません。
お金の話をするタイミングとしては、実家でゆっくり過ごせるお盆や年末年始がいいでしょう。きょうだいがいるなら、みんな揃っているところで話を始めたいところですが、それがむずかしければ、親との関係が最も良好な子どもが代表して話を進めてください。
ここで注意してほしいのは、お金の話だからといって構えすぎないこと。子どもの側に「お金の話はちょっと……」という意識があると、親もそれに同調してしまいます。あくまでも、両親のことを「心から心配している」から話をするのだ、というスタンスでその場に臨みましょう。
何を話の糸口にするかは、人によって違ってくると思いますが、たとえば「お風呂場やトイレに手すりがあるといいね」から始まってもいいのではないでしょうか。
「いまは健康でいてくれてありがたいけど、この先のことを考えると、お父さんお母さんが暮らしやすいようにリフォームする必要もあるかもしれないね」
「残念ながら、自分たちのいまの経済状況では『全部、子どもたちで面倒を見るよ』とは言えないんだよね。だから、いざという時は、お父さんお母さんのお金を使わせてもらいたいと考えているんだ。もちろん、足りない分は僕(私)たちも出すつもりだよ」
「お父さん、お母さんにとってはイヤな話かもしれないけど、でも一度、きちんと話をしておきたいんだ」というように、淡々と、正直に話をすれば、親も警戒することなく話し合いに応じてくれると思います。
その上で、親を怒らせたり悲しませたりせずに、うまく話を切り出すコツがあります。相談者から聞いた話をご紹介しましょう。
50代のKさんは専業主婦。「お盆で実家に帰った時、75歳の父親が『物忘れがひどくなってなあ』とぼやいていたんです。母親も『ホント、歳を取るのはイヤよねえ』なんて言って。でも、それで私が『だったら、通帳の置き場所を教えておいてよ! もしもの時、困るから』と言ったら、父が『なんだ、久しぶりに顔を見せたと思ったらお前、金の話をしに来たのか!』って怒り出してしまって。それ以降、お金の話はできない雰囲気なんです」とのこと。
これは、親の「気持ち」が理解できていない典型的な例です。
老親にとっては、自分の〝老い〞を自覚することがとても大きなストレスなのに、そこへ子どもからいきなりお金の話を切り出されたら、警戒して態度を硬化させてしまいます。では、この場合、Kさんは父親にどう話せばよかったのでしょう?
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