ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

施設での入浴は平均1週間に2回が基本

入浴回数に必ずはない

 

毎日の入浴が習慣の家庭は多くあります。ですが、入浴介助は体力も時間もかかります。親の身長、体重や症状によっては、ひとりでは難しく数人で対応することになり制限が出てきます。あまりにも負担を感じたら、「垢で死んだ者はない」ということわざを正当化しましょう。

 

施設での入浴は平均して1週間に2回が基本です。母の場合、圧迫骨折で自宅での入浴が困難になる前は、1日おきでした。正直なところ自分でこのルールを決めておきながら、入浴介助の日は苦痛でした。便が付着していることも多かったため、家族が全員入った後、洗い流す前のお湯に入れていました。

 

まず外で股間を洗い流し、湯船に入れる。そして湯船では髪の毛も身体も一気にその中で洗うのです。荒っぽいですが、これで良いと割り切りました。

 

時間を問わずトイレを失敗して、例えば大便まみれになったときは、すぐにシャワーをします。そのままさっぱりさせて、その日の入浴は終了にしました。とにかく、何がきっかけであれ身体を洗えれば良いのです。現在は車いすになり機械浴対応なので、週に2回、施設で専門家にお願いしています。

 

今さらですが入浴は負担が大きかったので早く施設に相談すれば良かったと思っています。自宅のお風呂を使って入浴の補助をする訪問介護の入浴介助サービスや、持参した浴槽で寝たきりの人などを入浴されてくれる訪問入浴介護もありますので、これは積極的に利用しても良いサービスかと思います。

 

冬は気を付けたいヒートショック

 

家の中でも、暖かい居室から寒い風呂場への移動は、急な温度変化で身体に影響を及ぼします。高血圧、糖尿病、動脈硬化、不整脈、肥満、無呼吸症候群を患っている人はより注意をしてください。リスクがある人は一番風呂はやめること、食後は1時間以上あける、水分を補給するなど予防を心がけるだけでも防ぐことができます。

 

浴槽は贅沢なものほど危ない

 

温泉施設にあるような全埋め込み型の浴槽はつかまるところがなく介護向きではありません。半埋め込みは良いのですが、またぎにくい場合は、すのこ、などを敷いて高さを調整してください。

 

ゆったり脚が伸ばせるサイズは贅沢ですが、高齢になると体勢が保持できず身体が下にズレてしまい溺死する事故もあります。少し膝を曲げて入るくらいの窮屈な大きさが本当は丁度良いのです。介助者がずっとついているなら良いのですが、独居など親がひとりで入浴する場合は浴槽のタイプも注意してください。

 

あざ、褥瘡など身体チェックも入浴時に

 

ちょっとぶつけただけでも、すぐにあざになるのが高齢者。血管がもろく内出血するのです。私は、せっかく裸になるのならと、この機会に身体をチェックしていました。

 

おばあちゃんの知識ではありませんが、あざやたんこぶには、砂糖を粘り気があるくらいに水で溶いて患部に当てておく、たんこぶには馬油も効果があるといわれています。褥瘡には、アバンドという清涼飲料もお薦め。少し値が張りますが、オレンジフレーバーで250㏄くらいの水で溶いて飲むものです。疲労回復に良いのですが褥瘡にも効きます。母には退院後、少し皮膚が赤くなって体力もない頃に続けて飲ませていました。

 

また、高齢になると皮膚が乾燥するので、かゆくてかきむしる人もいます。母の入浴日は保湿クリームを持参していますが、アロエタイプ、メンソールタイプなど種類も豊富にあります。保湿目的なので、安価なもので十分です。施設や訪問サービスで入浴を依頼する際は、こちらからクリームを渡して、湯上がりに手足につけてくださいとお願いすることも可能です。是非相談してみてください。

 

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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