ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

古着を活用して、便で汚れたら捨てる

衣類についた便の臭い

 

便がもれて、衣類やタオルに付着してしまったときはもちろんですが、直接ついていなくても、どうしても異臭がとれないことがよくあります。加齢臭という言葉もありますが、脂っぽかったり、甘ったるかったりと個人で差はありますが、高齢者には独特の体臭があります。

 

せっかく、洗濯をするのですから、臭いも退治しておきたいところですが、良く洗ったつもりでも、何となく便の臭いがとれていないように感じることがありました。柔軟剤を使ってその香りでごまかすこともできますが、高齢者に使用するとかぶれることもあります。

 

洗剤も介護専用のものが売られていますが、他の家族のものと一緒に洗濯をするので、できるだけ、あれこれ購入することはやめたいと思っていました。そんなとき、良い方法があったのです。とても気になる臭いは重曹水(水200㎖に対して重曹小さじ1杯)につけ置きしてから洗濯をするようにしてみました。これは、臭いに対し安心で効き目がある方法だと思います。

 

失禁(大便)対策は古着を活用するのも手だという。(※写真はイメージです/PIXTA)
失禁(大便)対策は古着を活用するのも手だという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

失禁(大便)対策の古着

 

便秘が続いていると思ったとき、私の休日である土日に、小児から服用できる液体便秘薬(ミルマグ内服液:エムジーファーマ製造販売)を使って意図的に排便を促すこともしました。母の通っていた病院では、下剤は外科にかからなければならず処方されにくかったこと、大人用の便秘薬を使用することには抵抗があったからです。

 

もしも、薬の使用に抵抗があるのなら、マグネシウムを多く含んだ、にがり水がスーパーで手に入るので薄めて飲んでも効果があります。すぐに出るという保証はありませんが食物繊維入りの飲料などで排せつを促すのも手です。便秘になると、気持ち悪くなる、嘔吐する、嘔吐物が詰まって誤飲性肺炎になる、なんてことも実際にあるので侮れません。

 

私の使用した便秘薬ですが、小児から服用できるとはいえよく効くため、少し軟らかくなって大量に出ます。こういった軟便は、衣類につくと色が染みつきやすく洗濯も大変ですし、漂白も面倒です。一回で完結すれば良いのですが、数時間おきに出ることもあり、何回もおしりを拭いたり、洋服を替えていたことがあります。そのたびに洗濯で大変な思いをしていました。

 

思いついたのが、こういう日のために、リサイクルショップで古着を買っておくことです。安ければなんでも良いのです。1枚50円くらいでズボンが手に入ることもあるので、親のサイズに合う手頃なものを見つけたら、迷わず購入です。捨てようと思っていたズボンがあるなら、この日のために保管しておくのも良いでしょう。

 

そして、便秘対策日に利用し、便で汚れたら捨ててしまいましょう。自分がしたくないことは、徹底的に避ける方法を考え抜いてほしいと思います。そして、後始末は大変ですが、便が出たことを喜びましょう。喜べるようになるには、介護者が楽をしてください。

 

 

感染症の消毒には、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤

 

冬になると、インフルエンザやノロウィルスが高齢者を悩ませます。親も家族も予防接種は必ずしてほしいのですが、気を付けていても、感染する場合があります。もしも、洋服が下痢や嘔吐で汚れた場合は、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤などにつけ置きしてから洗濯をしてください。

 

次亜塩素酸ナトリウムは、高温で分解しますので、熱湯では用いないようにしてください。色落ちしても気にならない洋服も何枚かほしいところですが、色落ちが気になり漂白剤を使いたくない場合は、何もいれないただの熱湯で消毒をしても滅菌の効果があります。

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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