医学部専門予備校・TMPS医学館代表取締役の長澤潔志氏が、自らの経験談をもとに、医学受験専門予備校に通う生徒たちのゆがんだ実態について解説していきます。

4浪中の学生が突然来なくなって…

私のところでは授業開始時間までに来ないと、すぐに電話を入れます。しかし、彼は滅多に電話には出ません。出るときは必ず、何か理由をつけてきます。「すみません。お腹が痛くて…すぐに行きます」。それを聞いて胸をなでおろして登校を待ちます。

 

しかし現れません。こんなことの繰り返しです。そしてある時は、「昨日、どうして休んだの?」と聞くと、「昨日は親と喧嘩してしまい、すみません」などと言います。

 

次の時は、「内緒なのですが、友達同士でトラブルがあって、その子たちのことを考えていたら眠れなくなったのです、すみません」。


必ず語尾に「すみません」とつけるのです。

 

ある時、その学生がほかの学生と諍いを起こし、何日も休んだのです。スタッフが電話しても、一向に出てくれません。

 

数日後、業を煮やして、彼の住んでいるマンションに出向き、直接会って、話をしました。いや、最初は一方的に私が話したといったほうが現実に近いでしょう。教職経験が長いので、およそ学生の考えていることは分かります。

 

たとえば笑顔を乱発する子は天真爛漫である場合もありますが、多くは自信がないので他人に好かれたい、認められたいのです。もちろん、このケースはじっくり観察しなくても後者のほうだと分かりました。

 

「すみません」の連発も、同様です。素直なのではなく、そう言うことで自分を守っているのです。休むたびにいつも言い訳が用意されているのも胡散(うさん)くさいわけです。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

つまり、「宿題をしてなかったのです」「今日は寝ていたかったのです」などと本当のことを素直に言えないのです。こうした性格は、ほとんどの場合、親からの抑圧に起因します。つまり、本当のことを言うと、子供の時から激しく怒られ続けたのでしょう。

 

もっとも、親にこの意識はありません。「怒られるようなことをするからだ」くらいの感覚でしょう。もっと私見で言わせていただければ、親の愛が根底にある怒り方と、愛を感じない、突き放した怒り方とでは、結果は全く違うものになるのです。後者が20年も続けば、誰だって、自分を守ろうとする習慣がつくのも当然です。

 

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本連載は、『医学部受験の闇とカネ』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。なお本記事で紹介している内容は、著者の体験をもとに執筆しております。万一、本連載の記載内容により不測の事故等が生じた場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。

医学部受験の闇とカネ

医学部受験の闇とカネ

長澤 潔志

幻冬舎メディアコンサルティング

講師歴30年の医学部専門予備校代表の長澤潔志氏が、実体験をもとに、合格率を偽って、「授業料を挙げる予備校」、「コネとカネがなければ合格できない推薦枠を設ける大学」、「指導力不足で受験生を浪人に導く高校」など、さま…

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