ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

認知症母は廊下や部屋で便や尿もしてしまう

トイレまでたどり着けない場合、部屋がトイレとなる

 

要介護5まで自立歩行ができていた母は、歩けるけど、トイレの位置がわからなくなっていました。リハビリパンツ(紙オムツ)をはいていたので、間に合わないならそのまましてくれても良いものなのですが、ご丁寧に脱いで用を足すため、至る所がトイレとなります。

 

廊下や部屋に便や尿をしてしまうことがありましたが、都合が悪いので自分とは認めません。「あたしじゃないよ。犬だよ」という始末です。わが家には柴犬が4匹いるのですが、狂犬病の注射に行ったとき恐れのあまり失禁をしました。そのとき、助手さんが「あらあら」と言いながらペットシーツで吸い取っていたのです。これって、うちの母にも使えるよね、とピンときました。

 

尿を絨毯にしてしまうと拭き取りが困難ですが、早く対処すると割と多くをペットシーツで吸い取ることができるのです。廊下などはこれで吸い取り、そのまま捨てられて便利です。歩けてトイレまではたどり着ける親で、間に合わず失禁することが多いのなら、トイレの床に予め敷いておくのも一案です。動物病院の動作を真似たのですが、ペット用と決めつけず、代用して正解でした。

 

探偵になって汚染物を探し出す

 

大便も尿も、トイレの便器以外の場所や部屋の絨毯の上、廊下などに失禁したとしても、そのままにしていてくれればまだ良いのですが、洋服で拭いて隠すことがあるのです。まさしく洗濯済みの洋服がトイレットペーパー替わりなのです。臭いのするところを探しますが、なかなか見つかりません。臭い部屋で時間ばかりが過ぎていき、やっと見つけては洗濯の繰り返し。

 

この頃は、私自身、疲れがたまり、苛立ち、何もかも放り出したいほどつらかった時期です。仏壇のご先祖様には「お願いだから母を早く迎えに来てください」と毎日、念仏のように唱えていました。

 

この問題行動を少しでも事前に防ぐためには、タンスに鍵をつけておく、目につきやすい場所に捨てても良い古着や古タオルを置き、使用を誘導するのも一案です。そして、運良くその古着をトイレットペーパー替わりにしたのなら、潔く捨ててしまいましょう。洗濯の手間が省けます。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

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渋澤 和世

プレジデント社

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