「男性の思考」と「女性の思考」は真逆
歯科衛生士、歯科助手、どちらもほとんどが女性ばかりです。つまり、女性を理解することが、歯科医院を上手く回していくための必須項目。男性とはまるで違う思考回路であるということをまず理解しましょう。
何かを始める時、男性は「どうやったらプラスになるか」を考えます。それに対して女性は「どうやったらマイナスが少なくなるか」を考えます。
例えば「医院収入を増やしましょう」という課題に対してのアプローチ方法。男性院長は「新しい器具や材料を買って収入を増やそう」と考え、一方で女性スタッフは「無駄使いしているところがないか」を探します。どちらも「ゴール=医院収入を増やすこと」というのは同じですが、入ってくるものを増やそうとするのか、出ていくものを減らそうとするのか、逆の考え方になります。
「お金がない、と言っているのに院長は高価な機材ばかり買う」
「うちのスタッフは、ちまちました非生産的なことしかしない」
どちらの言い分も間違いではありません。
「男性の理想論」に女性がついていけないワケ
また、男性は「遠い未来の大きな理想」や「抽象的なこと」を考えたり語ったりするのが好きです。一方、女性は「目の前にあること」や「今やるべきこと」に意識が向きがち。見ているものの違いで、話が噛み合わなくなることが多々あるのです。
もしかするとあなたの歯科医院で、女性スタッフは、目先の小さな出来事でいっぱいいっぱいになっているかもしれません。
そんな状態なのに、抽象的な理想論を語られても理解できるはずがありません。「ついていけない」と感じるだけです。
「俺の理想の歯科医院」を夢見る前に、まずはスタッフとともに目の前にある小さなことに焦点を合わせてみてください。
女性を伸ばすのは「ダメ出し」より「努力への評価」
結果よりも、過程が大事。これも男性歯科医師には理解し難いことかもしれませんが、女性スタッフにとってはかなり重要なポイントです。
何かに取り組む際、男性が重視するのは「結果」です。最終的な結果がすべてであり、結果に至る過程は割とどうでもいいと考えがち。
一方、女性はとにかく「過程」を大切にします。女性は自分が目的のために努力していること、自分の行った創意工夫の数々を細かく覚えているもの。そこに自分なりの達成感があれば、結果はそこまで重視しません。「過程」こそが「自分の努力の証」となるのです。
だから、結果だけを見て駄目出しをするのはもってのほか。「私、こんなに頑張っているのに」「あんなに努力してきたのに」と悲しくなり、やる気を失ってしまいます。ここまでの努力を無視されたように感じるのです。
「でも結果出てないよね?」と言いたくなる気持ちはよーくわかりますが、そこはグッと堪えましょう。もちろん結果を出すことは重要ですが「頑張った」という過程に、まずは目を向けてあげることを忘れないでください。
そこに至るまでに彼女が何をしてきたのか、まずは話を聞く。そしてその過程を十分に認めて褒めてください。改善策を考えるのはそれからです。
そんなに頑張っていたのに結果が出なかったのであれば、次からは少し違う方法で頑張ってみようか…というように、少しずつ少しずつ、「結果」を求める方向にシフトするのが円滑に事を運ぶポイント。「女性の思考回路を理解すること」は歯科医院経営の初めの一歩と心得ましょう。
大澤 優子
株式会社ケロル代表取締役、歯科医師