スタッフがミスを…注意の第一声を「大丈夫?」にすべきワケ

スタッフが集まらない、せっかく採用しても育たない、すぐに辞めてしまう…人材難に直面しているのは、どの業界も同じでしょう。筆者が身を置くのは歯科業界。女性スタッフが圧倒的に多いうえに、世代間ギャップが大きいことから、どのように従事してもらい仕事を回していくべきか、苦心する職場が少なくないようです。スタッフを辞めさせないためには、どうすればよいのでしょうか? 筆者が女性歯科医の目線から解説します。※本連載は、大澤優子氏の著書『歯科衛生士のトリセツ』(かざひの文庫)から一部を抜粋・再編集したものです。

「他人のいる場所で叱る」が絶対NGなワケ

スタッフを注意をする際は、その内容はもちろんですが、どの場所で注意をするか?というのも重要な問題です。

 

絶対にやってはいけないのが、患者さん&他のスタッフの前で叱ること!

 

彼女たちは、歯科衛生士、あるいは歯科助手といった肩書を持つれっきとした「プロ」です。それが、他の人が見ている前で叱られてはメンツが丸つぶれ。

 

注意された内容よりも、「恥をかかされた」という意識のほうが強くなっては意味がありません。歯科医師への反発心が生まれやすく、要らぬ亀裂を生むことにもなります。こちらとしては単に「ミスをしたので注意した」というだけのことが想像以上の傷になりかねないのです。

 

それでなくても、あまり叱られた経験や負けた経験のない彼女たち。そのプライドは高く、脆いということを頭に入れておきましょう。患者さんの目の前で叱ることで、患者さんに余計な不安を与える可能性もあります。

 

同様に、少し難しいことやレベルが高いことを歯科衛生士が行う際、「大丈夫? できる?」とその場で聞いてしまうことがありますが、これも要注意です。

 

心配してのことなのですが、本人のやる気をなくさせる上、患者さんも不安にさせる、最悪の言葉がけです。

 

当院では、診療中にすぐに注意が必要になった場合は、メモに書いて渡す、あるいは、「一度うがいしてもらって」というセリフを合図に、バックヤードに呼んで個別に話をします。

 

最初になぜ呼ばれたと思うかを尋ね、こちらが思うとおりの回答なら次回から気をつけてもらう。なぜ呼ばれたのかわからない、あるいは見当違いの答えを返した場合は、しっかり説明し、一緒に対策を考えて指導します。

注意する前にまず「疲れてる?」「体調悪い?」の一言

若いスタッフの仕事ぶりを見ていると、眉をひそめるような所作を目にすることがあります。

 

例えばドアを閉める時には「バーン」、診療の基本セットをバットの上に置く時には「ガシャーン」と大きな音を立てる。それによって周りの人がビックリしたり、不快に感じたりするということがわからないようです。

 

また、頻繁に物を落とす、物を壊すスタッフは注意力が散漫。キャビネットの端に物を置いたら落ちるかもしれない。はみ出して置いたら誰かが通った時にぶつかって落ちるかもしれない。そんなふうに、次にどんなことが起こるかを予想する想像力が乏しいのです。

 

歯科医院で使用する機器は高額ですが、スタッフは値段を知りません。防止策として、機器や材料すべてに値段を書いたシールを貼っている先生もいるようです。

 

また、「引き出しを手ではなく足やその他の部分で閉める」。これは、想像力ではなく単に行儀の問題です。急いでいるのはわかりますが、オープンな診療室、個室の場合を問わず、他人に見られています。

 

彼女たちは、普段は必要以上に「人にどう思われるか」を気にして行動する割に、「人にどう見られているか」には気が回らない側面があるようです。こういった類の問題は、自分では気づいていないことが多いのです。

 

ですが、正面切って注意をすると険悪な空気になりかねません。それを回避するためには、一回クッションを入れるのが得策。

 

バックヤードに呼んで、第一声は「疲れてる?」「体調悪い?」。

 

疲れや体調のせいで動作が荒っぽくなっているのかもしれない…まず相手に見せる必要があるのは、「怒り」ではなく、こうした「気遣い」です。このワンクッションで、相手はぐぐっと話を聞くハードルを下げるのです。

 

それから本題に入り、「あなたのすることは周りから見られているよ」「高い物を壊すと売上に響いて、巡り巡って給料が減るよ」とやんわり注意します。

 

無意識の行動のため、すぐにゼロにはならないかもしれませんが、指摘されたことで確実に改善されていきます。

 

これが、注意するのが同じ内容でも「どうしてこんなことをするの、すぐに直しなさい」とストレートにぶつけると、相手も素直に聞かず、言い訳をし、態度を改めないままになってしまうことがあります。

 

それが、たった一言「疲れてる?」「体調悪い?」と付け加えるだけで歩みよりの姿勢を見せるので、これを使わない手はありません。

 

「素直に話してもらえる環境作り」でミスを予防

「相手の態度が悪いのに、どうしてこちらが気を遣わないといけないの」と思うかもしれません。

 

ですが、「育ててきたスタッフに辞められて歯科医院の収入が落ちることに比べれば、自分のプライドを捨てるくらいなんてことはない」。私はそういう結論に達しました。

 

この注意の仕方を取り入れてからは、私が見ていないところでスタッフが何か壊してしまっても、自ら率先して謝りにくるようになりました。

 

こちらが「気遣い」を見せると、相手もこちらの気持ちを察知してミスを自己申告してきます。そして、叱られなくとも自分で反省できるようになります。

 

かつて、あるスタッフが退職した後に、スタッフルームの引き出しから大量の歯科材料が見つかったことがありました。補充の際にケタを間違えて注文したスタッフが、叱られることを恐れて隠していたのです。

 

このようにミスを隠蔽されてしまうと、原因もわからず、また同じことを繰り返しかねません。こうしたことを避けるためにも、大切なのは常日頃からの、申告しやすい関係性づくりです。

 

素直に話をしてもらうために、まずは「気遣い」を! 内心怒り狂っている時もありますが(笑)、相手に怒りの感情をぶつけても何の解決にもならないのです。

男性は「女性スタッフがすぐ泣く」と悩みがちだが…

男性の歯科医師からよく聞くのが、「スタッフがすぐ泣く」という悩みです。

 

少し注意をしただけなのに泣く。泣かれるとそれ以上話を続けることができず、お手上げ状態。泣いている時は恐らくこちらの話を冷静に理解できるモードではないので、注意した内容は頭に入っていないでしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

さて、彼女たちはなぜ泣くのでしょうか。私は、これまでに「厳しい」「冷たい」などと言われたことはあっても、スタッフを泣かせたことはありません。女性同士だからこそわかってあげられる側面もあるのかもしれないと思います。

 

思うに、涙の理由は、まず叱られた経験が少なく、打たれ弱いこと。そして、単にその時に感情が盛り上がったから。それだけではないでしょうか。悲しい・悔しい・怖い。そうした感情を上手く言葉で表せず、代わりに涙となっているのだと思います。

 

こちらが考え込んだり悩んだりするほど難しい理由はありません。必要以上に感情を揺さぶらないよう、ぜひ、本記事を活用して注意の仕方を変えてみてください。スタッフが泣く回数は格段に減ることと思います。

 

また、男性の歯科医師に注意してほしいのが、「声のボリューム」。

 

自分で思っている以上に大声になっていませんか? 声が大きいと、それだけで威圧的に感じられてしまいます。普通に注意しただけのつもりが、大声のせいで「怒鳴りつけられた」と解釈されているのかもしれません。体育会系出身の院長の場合はなおさら、一度声のボリュームをチェックしてみましょう。

 

 

大澤 優子

株式会社ケロル代表取締役、歯科医師

 

 

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株式会社ケロル 代表取締役
歯科医師 

八戸市出身。岩手医科大学歯学部卒業後10年の勤務医生活を経験し、その後大澤歯科医院副院長となり現在に至る。

医院とスタッフのマネジメント、子育てで悩んでいた40代で個性心理學と出会い、個性心理學認定講師として一部上場企業、歯科デーラー、小児科医院などでの講演を多数行っている。

青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログで女性歯科医師としての目線で、日々の診療、働く女性として、子育てのことなどを発信中。

●青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログ:https://ameblo.jp/dr-yuko0610/

著者紹介

連載現役歯科医師が解説!スタッフを辞めさせないマネジメント

歯科衛生士のトリセツ 女性歯科医師だからわかる歯科マネジメント

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大澤 優子

かざひの文庫

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