ブラジル中銀、市場予想を上回る利上げで正常化に着手

ヘッドライン21年3月10日号『波に乗れないブラジルレアル』でブラジルの通貨レアルが軟調な背景を指摘する一方で、上昇に転じる方策として3月の会合での利上げの可能性を述べました。しかし、3月の会合での利上げ幅は想定を超えている上、次回の利上げまで示唆したのは想定外でした。ブラジル中銀は物価上昇懸念を前に、踏み込んだ判断を示したと見られます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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ブラジル中銀:市場予想を上回る政策金利の引き上げと、次回の利上げを示唆

ブラジル中央銀行は2021年3月17日、政策金利を過去最低水準となる2.00%から0.75%引き上げ、2.75%にすると発表しました(図表1参照)。利上げは全会一致で決定されました。利上げは15年7月以来、約5年半ぶりです。

 

日次、期間:2019年3月18日~2021年3月18日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジル政策金利とレアル(対ドル)の推移 日次、期間:2019年3月18日~2021年3月18日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

今回の利上げ幅は市場予想の0.5%を上回ったうえ、声明で次回会合での利上げを発表するというタカ派的(金融引締めを選好)な内容でした。

どこに注目すべきか:ブラジル中銀、インフレ率、予想、正常化

ヘッドライン21年3月10日号『波に乗れないブラジルレアル』でブラジルの通貨レアルが軟調な背景を指摘する一方で、上昇に転じる方策として3月の会合での利上げの可能性を述べました。しかし、3月の会合での利上げ幅は想定を超えている上、次回の利上げまで示唆したのは想定外でした。ブラジル中銀は物価上昇懸念を前に、踏み込んだ判断を示したと見られます。

 

ブラジル中銀が今回、タカ派に転じた背景はインフレ率上昇懸念です。ブラジル中銀のインフレ予想を見れば明らかで、1月会合時点では21年のインフレ率を3.60%と予想していましたが、今回5.00%へと引き上げています(図表2参照)。22年のインフレ率の予想は1月時点の3.40%から小幅の上昇ですが、大幅な利上げを想定してのことです。

 

予測時点:2021年1月(前回)~2021年3月、期間は21年、22年 ※レアル(対ドル)と各年末の政策金利はインフレ率予想の前提条件 出所:ブラジル中央銀行のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジル中銀のインフレ率予想と、予想の前提 予測時点:2021年1月(前回)~2021年3月、期間は21年、22年
※レアル(対ドル)と各年末の政策金利はインフレ率予想の前提条件
出所:ブラジル中央銀行のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、ブラジル中銀のインフレ率目標は21年が3.75%、22年が3.50%に設定されています(それぞれ±1.5%が上限と下限)。例えば21年については、中銀の予想インフレ率が既にインフレ率目標の上限(5.25%)に迫っており、何らかの対応が求められる水準です。

 

予想だけでなく、足元のインフレ率も上昇しています。ブラジル地理統計院(IBGE)が3月11日に発表した2月の消費者物価指数(IPCA)は食品価格の上昇などを反映して前年比5.20%と市場予想(約5.0%)を上回り、21年のインフレ率目標の上限にほぼ一致しています。

 

次に、ブラジル中銀の予想の前提を為替レートについてみると、今回レアル(対ドル)レートを5.70と前回よりレアル安方向に修正し、現実を反映した水準となっています。予想の前提としている政策金利は21年末で4.50%をブラジル中銀は想定しています。今回の利上げ前の水準が2.00%であったことから、ブラジル中銀は、実際の引き上げ幅は今後の状況次第ですが、年内合計2.50%を想定していることになります。

 

ブラジル中銀のタカ派姿勢を受け、市場では小幅ながらレアル高に転じる動きも見られます。ブラジル中銀は利上げにより金融政策の「部分的正常化」の進展の維持が期待されるからです。

 

しかし、レアルの本格的な回復には懸念があります。ひとつは財政懸念です。例えば財政政策の柱である低所得者層向け現金給付の財源につて、ブラジル議会は先週、同措置の財源を歳出上限ルールの対象から外すことを認める憲法改正案を可決しています。財政規律への不安を抱えながらの経済支援策を市場が評価するには慎重な運営が求められます。

 

そして何といっても、ブラジルは新型コロナウイルスの感染が依然深刻なことがレアルの動向、したがってインフレ率を左右すると見られます。17日にはブラジルの新規感染者数は9万人を超えるなど、感染収束の兆しも見えない状況です。財政政策も含め政治の対応を注視する必要がありそうです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジル中銀、市場予想を上回る利上げで正常化に着手』を参照)。

 

(2021年3月19日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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