波に乗れないブラジルレアル

ヘッドライン21年1月25日号でブラジル中銀の政策について利上げの準備を進めると述べました。そこでは利上げは様子を見てからというトーンでした。しかし次回の会合での利上げの可能性が高まったと見ています。インフレ率の上昇予想などが理由ですが、その背景はレアル安です。通貨安抑制に向け利上げカードを切る必要に迫られる展開を想定しています。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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ブラジル中央銀行:インフレ率上昇懸念を前に、利上げの可能性

ブラジルのルラ元大統領は左派で人気がありながら有罪判決により大統領選挙出馬できませんが、これを覆す可能性が示され、通貨レアル(図表1参照)は下落しました。

 

日次、期間:2019年3月11日~2021年3月9日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジル政策金利とレアル(対ドル)の推移 日次、期間:2019年3月11日~2021年3月9日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ブラジル中央銀行は3月17日(日本時間、18日早朝)に金融政策決定会合の結果を発表することが予定されています。ブラジル中銀は前回(1月)会合まで4回連続で政策金利を過去最低水準となる2.00%に据え置いてきました。しかし、市場予想では次回の会合で2.50%へ利上げすることを見込んでいます。

どこに注目すべきか:インフレ率、レアル安、財政規律、現金給付

ヘッドライン21年1月25日号『ブラジル中銀、フォワードガイダンス変更の意味』でブラジル中銀の政策について利上げの準備を進めると述べました。そこでは利上げは様子を見てからというトーンでした。

 

しかし次回の会合での利上げの可能性が高まったと見ています。インフレ率の上昇予想(図表2参照)などが理由ですが、その背景はレアル安です。通貨安抑制に向け利上げカードを切る必要に迫られる展開を想定しています。

 

月次、期間:2016年1月~2021年1月、前年比、小売売り上高は12月迄 ※インフレ率はIPCA消費者物価指数、2月は5%台が予想されている 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジルインフレ率と小売売上高の推移 月次、期間:2016年1月~2021年1月、前年比、小売売り上高は12月迄
※インフレ率はIPCA消費者物価指数、2月は5%台が予想されている
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ワクチン接種の拡大による景気回復期待から資源価格は概ね上昇傾向です。しかしながら、世界でも有数の資源大国であるブラジルの通貨レアルは相対的に軟調です。最近の米国長期金利の上昇や、新型コロナウイルスは新興国全般に影響を与えており、ブラジルも同様に影響を受けています。ただ、相対的に(他の新興国に比べ)レアルが弱い背景として主にブラジル独自の事情が考えられます。

 

新型コロナウイルスは世界共通の問題ですが、ブラジルの場合は変異ウイルスの感染拡大の影響が深刻です。足元の新規感染者数が1日当り8万人超と世界最多となっており、ブラジルは当面コロナ対応が重い課題となりそうです。

 

次に、財政悪化懸念もレアルの悪材料です。18年の選挙で当選したボルソナロ大統領は年金改革など財政規律を重視していました。結果としてインフレ率も比較的落ち着いていました。

 

しかし、コロナの感染者が拡大してからは、低所得者向け現金給付を手厚くするなど、左派政権のような政策も採用しています。財政不安を受け一旦は停止した現金給付も先月再開を発表しています。

 

なお、ブラジルでは来年大統領選挙が行われる見込みです。仮に左派に鞍替えしたかのようなボルソナロ大統領が姿勢を変えず、左派の本家ルラ氏と争うとなれば、ブラジル財政の更なる悪化も想定されます。

 

レアル安を受け、インフレ率上昇も懸念されるなか、そのインフレ対策にも疑問が残ります。2月にはディーゼル燃料価格の引き下げを求め、国営石油会社の経営者を更迭したことがレアル安の要因となりました。ブラジルではインフレ率が上昇すると消費が落ちる、反対にインフレ率が低下すると消費が伸びる傾向が見られます(図表2参照)。したがって、インフレ率を抑える政策は方向として理解できます。しかし、国営会社とはいえ、このようなやり方を市場は評価しませんでした。

 

では何があるかといえば、利上げを選択すると想定しています。筆者は1月時点では利上げ時期を明確にしませんでしたが、次回の会合での利上げの可能性が高まったと見ています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『波に乗れないブラジルレアル』を参照)。

 

(2021年3月10日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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