ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

介護で休日を使うと精神的・体力的にも余裕がなくなる

遠距離介護も工夫次第で乗り切れる

 

私は父が亡くなる1か月前まで、遠距離介護でした。両親が自宅での暮らしを望んでいたからです。住み慣れた環境で暮らし続けたいというのは自然で、介護保険サービスや民間のサービスを上手に組み合わせれば可能です。

 

メリットは、子も自分の生活が変わらない、親も自由気ままに住み慣れた家で生活ができること。デメリットとしては、お互いに移動の際、交通費などの負担が増える、移動時間もかかる、休日を介護に費やし精神的・体力的にも余裕がなくなる、すぐに駆けつけられないなどです。遠距離介護の目安は、要介護2まで、それを過ぎると、同居か近くに住むか、施設が安心というのが私の感触です。

 

遠距離介護にはメリットもデメリットもあるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
遠距離介護にはメリットもデメリットもあるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

親の地元の地域の協力者を確保する

 

離れて暮らしている以上、「いざ何か起こったとき」に駆けつけてくれる協力者は必ず必要になります。わが家は、親戚が多くいたこと、ご近所との関係が良かったこと、昔から付き合いのあるかかりつけ医がいたこと、そして何より、担当のケアマネージャーが看護師出身で体調の異変によく気づき密に連絡をとれたことが続けられた理由です。

 

親の人柄や地域での生活態度も影響してくることでもあります。帰省の際には、必ず、お世話になっている方にご挨拶をすること、ときには手土産を持参して感謝の気持ちを伝えることも大切です。煩わしく感じることもあるかと思いますが、とても大切なポイントです。

 

離れて親と暮らすなら救急医療情報キットをつくろう

 

親も高齢になると脳血管障害や転倒など急に病院に行かなくてはならないことも出てきます。だけどすぐに家族が駆けつけられないというのが現実です。事前にできるお薦めの手段は、保険証や診察券、お薬手帳など医療関係書類、もしくはその複写をまとめて冷蔵庫などわかりやすい場所に入れておくことです。

 

救急医療情報キットは市区町村で配布されているところもあるようですし、市販でも売っています。自分で透明な容器でつくることもできます。119番通報でも、ご近所や親戚にヘルプを依頼する際でも、冷蔵庫に入っていると言えば伝わりやすいです。わが家も準備していましたが、幸いにして使用はしませんでした。ですが、備えておくと安心です。

 

市区町村や民間の高齢者在宅生活支援サービスを利用する

 

多くの自治体で緊急通報システムを提供しています。外出先でも使える携帯型と自宅内専用のものなど24時間365日、緊急時の対応をしてくれます。火災センサー、ガスセンサーなどの付加サービスもあります。民間やNPO法人などでも同様のサービスを実施していますので頻度や利用料も併せて、親の状況に合ったサービスを探してみてください。

 

認知症の方は、警備会社などとサービスを契約しても通報ができない、自分が誤って通報をしたのに駆けつけた人に「何の用ですか、警察を呼びますよ」などと詰め寄りトラブルとなるケースもあります。特に問題がないけど何となく心配な程度であれば、郵便、新聞、牛乳の配達をしながら見守りをするサービスもありますので併せて検討してみてください。

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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