旧正月明けを待っていよいよ大詰めを迎えた、商業ビル・ホテル・コンドミニアム併設の大型開発案件「Grand Marina Saigonプロジェクト」。国内外の投資家・不動産業界関係者たちは、このプロジェクトの現況を固唾をのんで見守っています。なぜならプロジェクトの背景には、ベトナムの法律が複雑に絡んだ、ビジネス上の厳しい事情があるからです。このプロジェクトの行く末は、ベトナム不動産市場の将来像となるかもしれません。現地で不動産ビジネスを展開する筆者が解説します。

外国人投資家が絶対に知っておくべき「リスク項目」 

 ●権利転売 

 

MASTERIは、一部を除くその他のデベロッパーが行っている、「Pinkbook(建物登記書)が発行される前の外国人物件の転売」は行っていません(ベトナム人は可能)。したがって、これまで引渡が完了した外国人権利物件は売却ができません。このプロジェクトも購入前に確認する必要があります。

 

現在も、引渡から3年以上経過しているにも関わらず、外国人にPinkbookが下りない状況が続いており、MASTERIの物件は、外国人に売りたくても、正規では売れない状況が続いています。 

 

 ●外国人購入禁止エリア 

 

外国人が物件購入を行う場合、いちばん気をつけるべきなのが「外国人購入禁止エリア物件」です。これはベトナムの法律において「国の安全に関わる地域では、外国人(外国企業)が土地や建物の所有権を購入することはできない」と定められています。

 

この問題は昨今の外国人へのPinkbook発行に影響を与えており、今後の購入形態を大きく左右すると考えられます。この問題がやっかいなのは、なんといっても、事前に販売禁止エリアが明確にされていない点にあります。

 

政府の記載事項では、空港、港湾、政府庁舎などの近郊が外国人購入禁止エリアとして記載されていますが、正式な承認は外国人が購入した物件のPinkbook発行時の審査で定められることになっています。つまり、購入してからでないとわからないのです。

 

これは今後、大きな問題になるリスクを秘めています。デベロッパーとの販売契約書上の免責事項には、不可抗力の範囲として、天災・戦争・法律改正や許認可変更等々が謳われており、いくら購入後であっても、政府の方針が変われば受け入れなくてはなりません。

 

実は現在進行形で、この問題で懸念される外国人購入禁止エリアを見越しての動きが出ています。

 

デベロッパーは、引渡に関する最終書類に、「販売契約からリースホールド契約(長期サブリース)に変更してもよい」との文言を追加している場合があるので、デベロッパーとの追加資料のやり取りには十分な注意が必要です。

 

ちなみに、販売業者の中には「リースホールド(サブリース)の途中での権利転売が可能」と謳っている業者もいますが、外国人の場合、リースホールド契約によって賃貸収入を得られる(賃貸許可申請後納税)という法的解釈は可能なものの、途中転売で利益を上げることは事業として明確に謳っていないため、法的にはグレーゾーンなのです。

 

したがって、転売収益に関する納税額も、「不動産転売税率2%」が当てはまらない可能性もあり、海外に送金する際の問題になります。その他、リースホールド契約に関しては様々な問題点をはらんでいるため、不動産専門の日系弁護士に相談して判断するようにしてください。

 

この国では明確な情報が少なく、日系企業(日本人)だろうとベトナム企業(ベトナム人)だろうと、不動産業者を全面的に信じ、頼り切るようなことをしてはなりません。とくにベトナム側は、問題が起こったあとから解決を図ることが非常にむずかしい国であることを踏まえたうえで、ベトナムでの不動産投資を検討してほしいと思います。

お勧め物件が少ない、最近のホーチミン不動産

最近のホーチミン不動産は、ハイリスクローリターンの物件も多く、正直お勧めする物件が限られています。その意味からも、本記事でご紹介した「Grand Marina Saigon」には、良い悪いは別として、筆者は大変注目しています。

 

ベトナム側物件が即完売すれば、ベトナムでの富裕層の動向が見え、外国人権利物件が即完売すれば、海外の投資家からのホーチミン不動産の評価が判明することになります。つまり、このプロジェクトの行く末が、今後のホーチミンの不動産投資の将来を象徴するものとなるのです。
 

 

徳嶺 勝信
VINACOMPASS Co., Ltd.
General Director

 

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