米ドル高・円安は「重大岐路」の可能性
米金利上昇が一段落し、目先的に低下に向かうなら、このところ米金利と連動してきた米ドル高・円安も一段落、反落に向かう可能性があります。
米ドル/円が108円を超えてくるなか、足元で104円半ば程度の90日MAを、4%程度といった具合に大きく上回ってきました(図表3参照)。じつは2017年以降、年間の最大値幅が10円程度にとどまるといった小動きが続くなかで、米ドル/円が90日MAを5%以上上回ったことはありませんでした。
2017年以降続いてきた米ドル/円小動きのプライス・パターンを見る限り、米ドル反発はここまでだと考えられますし、ここからさらに米ドル高となるようなら、4年続いてきた小動きパターンが終わった可能性が出てくる、つまり現在、テクニカルにおける重大な分岐点を迎えているといえるでしょう。
米ドル高・円安はここまでか、それともさらに110円に向かうところとなるのか、それを考える上で、株価の動向にも注目してみたいと思います。
先週にかけて、株価は何度か急落するなど不安定な動きとなりましたが、一般的には金利急騰を嫌気したと考えられています。たとえば米ナスダック指数は最大で1割程度の下落となりました。
筆者はかねてから、米金利が上昇すると米ドル高・円安が進み、その後米金利上昇に耐えられなくなった米国株が下落に転換する。そして米国株安が拡大すると、それに連れる形で米ドル安・円高に転換するのではないかと考えてきました。
米金利上昇からの米ドル高・円安、米金利上昇から株安になる、というところまでは予想通りでしたが、株安拡大から米ドル安・円高への転換は、未だ実現していません。先週は、日経平均が1000円以上の記録的な下落となった局面でも、円高への反応は限定的にとどまりました。
これまで見てきたように、最近の為替は米金利に連動すると考えるならば、米金利低下によって米ドル安へ転換する可能性があります。ただ、米金利急騰を嫌気した結果とされた株安が、米金利低下で株高に戻るなら、米ドル/円は連動の対象を金利から株に変えて上昇基調が続く、といった可能性もあるのかもしれません。
上述のように、米ドル/円はテクニカルに上限の重大岐路を迎えていると考えられるため、米ドル高・円安がここで踏みとどまるのか、それとも一段と進むところとなるのかは、金利・株価の動向がカギだといえます。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
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