相続人の誰かが遺産分割前に亡くなり、連続して相続が発生することを「数次相続」といいます。今回は、養子縁組をしたら、思わぬ遺産トラブルに巻き込まれた男性の事例をもとに、税理士の岡野雄志氏が「数次相続」について解説します。

ホッとしたのも束の間…税務署から連絡が

ところが、ホッとしたのも束の間…なんと、相続税申告した税務署から税務調査の通告が来たのです。税理士が申告手続き代行・代理契約した場合、その税理士や税理士事務所に連絡が入ります。当税理士事務所にとっても非常に意外で、驚きでした。手続きにも、申告額にも、何一つ不備はなかったはずです。

 

実は、相続税の税務調査で調査官が最も入念に調べるのは、金融機関の取引履歴です。預貯金口座の取引記録を一つ一つ確認し、高額な入出金があると、申告漏れの可能性を疑います。多くの金融機関が履歴照会に応じるのは、原則として申請日から5~10年以内なので、通常、税務署が調べるのは10年前までといわれています。

 

さて、困りました。

 

Hさんは、養親について10年前のことはまったく知りません。Hさんのご両親も、思い当たることがありません。当税理士事務所も、財産に関してはすべて調べて提出していますし、通帳もあるものは全部確認しています。申告書に不備はなく、手がかりは掴めません。

 

税務調査は拒否できませんので、Hさんと当税理士事務所でリハーサルを行い、とにかく準備だけは万全に整えることにしました。

 

税務調査というと、映画やドラマのシーンのように自宅や会社を調査官が急襲するイメージがあるでしょうが、任意調査の場合は事前に希望の場所を伝えることができます。書類を用意したり、金庫や書庫の中を調査官が確かめたりする必要があるので、申告を行った相続人の家で行われるのが一般的です。担当した税理士事務所で行う場合もあります。

 

Hさんの場合、養親の家はすでに売却されていましたので、税務署で税務調査を受けることになりました。Hさんには、事前のリハーサルで「わからないことはわからないと正直に答えましょう」とお伝えしてありました。

 

一通りの質疑応答があり、お昼に差し掛かったころです。Hさんの実父と実母が突然、税務署を訪れて来ました。そして、ちょっと車の中のものを見てほしいというのです。そこには、大人一人がやっと抱えられそうな大きさの毛布でくるまれた四角いものが…。

 

母親が毛布を剥ぐと、なんと中から現れたのは金庫! 実は、Hさんの養父の家を引き払う際、実親が室内を片付けたところ、あの開きっぱなしの金庫の裏から、別の金庫が出てきたのです。ところが、いくら鍵を探しても見つかりません。毛布で包んで押し入れにしまったまま忘れていたというのです。

 

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