相続人の誰かが遺産分割前に亡くなり、連続して相続が発生することを「数次相続」といいます。今回は、養子縁組をしたら、思わぬ遺産トラブルに巻き込まれた男性の事例をもとに、税理士の岡野雄志氏が「数次相続」について解説します。

心優しき養子を襲った「数次相続」の悲劇

「正直こそが、処世の一番安全な道」とは、経営の神様、松下幸之助の言葉。ドイツの偉大な社会学者、マックス・ウェーバーも「正直は信用を生むから有益である」と語っています。世知辛い世の中ですが、そんな現代でも欲をかかず、正直に生きる人は存在します。

 

Hさんは、まさに正直を絵に描いたような両親に育てられました。善良な両親は、こどものいない年老いた遠縁の夫妻のことを、いつも気にかけていました。遠方であるにも関わらず、半年に一度は所用のついでに夫妻の家を訪ねて体の具合を気遣ったり、世間話をしたりと、孤独な老夫妻を慰めていました。

 

そんなHさんの両親を信頼できると、夫妻は見込んだのでしょう。自分たちはもう老い先長くはないので、近い将来の相続発生に備えて、自分たちの相続財産の遺贈者、もしくは財産を管理する後見人になってはくれないかと頼んできました。

※「成年後見人制度」について詳しくは、前回のコラムをご覧ください。

 

人のいい両親は、即座に首を横に振りました。自分たちは財産目当てでお宅に伺ってきた訳ではないと。とはいえ、近しい身寄りがない老夫婦の不安ももっともです。帰宅して「どうしたものか」と嘆息する両親に、Hさんは提案しました。

 

「僕が養子に入ろうか?」

 

当然ながら両親は驚愕し、いくら何でも大事な息子をそんなに簡単に手放せないと猛反対。しかし、Hさんも長年、夫妻を気遣う両親の姿を見ています。また、当の両親ももう若くはなく、夫妻の遺産を譲り受けたとしても、程なく自分への二次相続となるでしょう。

 

Hさんはすでに安定した職を得ていたので、もちろん、財産ほしさからではありません。それどころか、老夫妻がどんな資産を保有しているかさえ知りません。ただ、両親の代わりに、両親が長きにわたって気にかけてきた夫妻の役に立てればという思いからでした。

 

実は、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、「普通養子縁組」なら実父母との親子関係は残ります。戸籍には実親名が記され、養親との続柄は「養子」または「養女」と記載されます。養親との同居義務もないので、実親と住み続けることも可能です。また、養親と実親両方の財産について相続権を有することができます。

 

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