母の台所からは、毎朝いい匂いがする
妖怪の一日はこうして始まる。6時にセットした目覚ましで起床
だいたい6時半には起きて着替えている。パジャマ姿でいることはほとんどなく、起きた時間から、誰が来ても困らない服を着ている。また、長年の習慣のようで、7時まで寝ていることは、これまたほとんどない。わたしの観察では、朝、めまいがすると訴えたのは年3回ほど。しかも、1時間後にはベッドから出てきて「もう治った」と言うではないか。ちなみに同じ状況の場合、わたしは一日中寝ている。
母親とずっと暮らしていた友人によると、「90歳を過ぎてからの母は、ほとんど寝ていたわよ」と話す。あまり静かなときは、死んだのかと思い、母親の口に手を当てて息を確かめたと笑う。
とはいえ、妖怪も人間なので、朝方、咳をしていることもある。お勤めがあるわけではないので、ゆっくり寝ていればいいのに、7時には起きているのだから恐れ入る。
一方、2階の気ままな娘は、7時過ぎまで寝ている。妖怪はきっと、「いつまで寝てる気?」と心の中では思っているに違いない。だが、お互いに暗黙の了解で口にはしない。言いあいになるのが分かっているからだ。それだけは避けたい。
7時 立派な朝食
妖怪の朝食は、パン食だが、なにやらいろいろテーブルの上にお皿が並ぶ。ちなみに娘のわたしの朝食は、コーヒー、ヨーグルト、パン一切れに卵と納豆が定番。まだ働いているので、妖怪のように、ゆっくり朝食を味わっている時間はない。
母の台所からは、毎朝いい匂いがする。
パン─
自宅の一角をお店にしている人が作っている、自然派のパンをいつも買っている。
牛乳─
雪印乳業販売店が配達する瓶入りの牛乳だ。50年近く配達してもらっているようだ。父が生きているときは毎日配達してもらっていたが、さすがに今は週2回に減らしたという。妖怪の体が強いのは、飲み続けている牛乳のせいか。
卵─
近所の友人に、ご実家から定期的においしい卵が届く人がいる。その卵が半端ではない。黄身がオレンジ色で、白身はプリンプリンの極上の卵。しかも大量に届くらしく、1回で数パック下さる。私もおすそ分けにあずかっている。それをゆで卵にしたり、目玉焼きにして妖怪は食べる。
野菜・肉─
肉好きなので、ソーセージやハムは欠かさない。野菜と一緒に炒めて食べている。ちなみに、観察した日は、もやしとピーマンとハムの野菜炒めだった。
その他、ヨーグルトと納豆は欠かさない。その日により、冷蔵庫から常備菜のらっきょうや、小魚が食卓に出ている。パンがないときはバナナ。とにかく、すごい品数にすごい食欲だ。スツールに座り、低いテーブルに腰をかがめて食べている光景には、身体とスツールがくっついているのかと見間違うほどだ。