「実家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母親が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。日本の高齢化は進み、高齢者と後期高齢者という家族構成が珍しくなくなってきた。老いと死、そして生きることを考えていきます。本連載は松原惇子著は『母の老い方観察記録』(海竜社)を抜粋し、再編集したものです。

さわやかな色の服を着るだけでいい

②身なりをいつもきれいにする…「元気で老いるための7か条」

 

ヨーロッパの高齢者を見ていると、みなさん、きれいな色の服を身に着けていることに気づかされる。一昨年オランダのデイサービスを訪問したときも、カラフルな洋服にお気に入りのアクセサリーをじゃらじゃらつけた高齢者ばかりで、実に明るく楽しそうに見えた。

 

一方、日本のデイサービスは、建物は立派でも薄暗い印象だ。その差は何なのか。民族性と言ってしまえばそれまでだが、服装に対して気を使う国民と、服装なんかどうでもいいと考える国民の違いだろう。

 

どんな服を着ていても自由だが、高齢になればなるほど、正直、見た目が汚くなる。せめて服だけでもきれいな色のものを身に着け、デイサービスの部屋の印象を変えてほしいと思う。

 

周りの人のために、明るいきれいな色を身に着け、他人の目を楽しませるという発想が必要だという。(※写真はイメージです/PIXTA)
周りの人のために、明るいきれいな色を身に着け、他人の目を楽しませるという発想が必要だという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

わたしがいつも強く思うことは、服装は自分が着るものではあるが、他人が見るものだということだ。つまり、あなたの服装は景色の一部、環境の一部なのである。その意識が大事だ。何を着ても自由だが、周りの人のために、明るいきれいな色を身に着け、他人の目を楽しませるという発想はどうですか。

 

町を歩いていても、施設訪問をしても、日本の高齢者が楽しく生きているように見えないのは、見た目にあるとわたしは分析している。洋服に関心がない?それはそれでいいが、回りの皆さんにサービスする気はないですか。

 

白髪頭にノーメイクの茶色い肌、そこに、枯葉色の上着にグレーのズボン。これでは、毎日が楽しいはずがないし、生きる気力も失われる。色には力があるので、色の力を借りて、残りの人生を楽しんでほしい。

 

地味な服装が好きな人もいるが、それは若いうちの話だ。ぴちぴちした体には地味な色も素敵だが、老婆に枯葉色では廃人に見える。

 

うちの92歳の妖怪にお友達から声がかかるのは、あの人の性格がいいのではなく、服装がカラフルで楽しいからだ。今から意地悪な性格を、かわいい性格に修正するのはむずかしいが、服装なら明日から変えられる。

 

急に変えるのが無理なら、せめて、首元にきれいな色のスカーフを巻くことから始めたい。不思議なもので、いつも茶系だった人が、オレンジや黄色のブラウスを着だすと、もう、きれいな色にしか目も手もいかなくなる。そして、自分がとても前向き思考になったことも感じられるはずだ。

 

お願いです。超高齢社会日本を明るくするために、あなたから明るい色を身に着けることで変えていきましょう。

 

センスなどよくなくていい。おしゃれじゃなくていい。コーディネートなど、どうでもいい。ただ、水色やオレンジといった、さわやかな色の服を着るだけでいい。そうすれば、どこに行くのも胸がはずむわよ。

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母の老い方観察記録

母の老い方観察記録

松原 惇子

海竜社

『女が家を買うとき』(文藝春秋)で世に出た著者が、「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。 おしゃれ大好き、お出かけ大好…

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