元気で生き切るには、いつも小ざっぱりした部屋
③狭い部屋できれいに暮らす…「元気で老いるための7か条」
年寄りの部屋は臭い。老人ホームにもよるが、建物に入ったとたんに独特の匂いがすることがある。友人の99歳の母親が暮らす老人ホームを見てみたくて、「行ってもいい?」と尋ねたところ、「部屋が臭うので来ないでいいわ」と言われ、娘の気持ちがわかるような気がした。
老人になると一種独特の匂いを発するようになるのは、仕方がないことだが、せめて、自分の部屋の空気だけは、きれいにして暮らしたい。
まわりの元気老人を見ていると、みなさん、朝は必ず掃除をしている。掃除は心の掃除とつながることは心理学で言われていることだが、わたしたちでも、掃除をしたあとはすがすがしい気分になる。一方、散らかしっぱなしで数週間ほったらかしのときは、なんとなく気分もよくないものだ。
年を重ねるにしたがい、掃除がおっくうになりがちだが、元気で生き切るには、いつも小ざっぱりした部屋にしておくことが必要だろう。
今気づいたが、もしかして、くすんだ色の服を着ている人は、室内もそんな感じなのかもしれないと。くすんだ環境で毎日を暮らしているから、くすんだ色に目がいくのかもしれない。
日本で3番目に古い老人ホームを経営している社長に伺った話だが、見学に来た方が見て、「狭すぎる」と思う部屋であっても、90代になると、ちょうどよくなるそうだ。60代の一歩を70センチとすると、90代の一歩は10センチと狭くなり、移動に時間がかかるようになるので、狭い方が使いやすいという論理だ。
「年だから」と自分に言い訳をして、食べかけのみかんはそのまま、ふとんは起きたときのまま、新聞は散在、と面倒くさがっていると、どんどん、ため息まじりの生活に向かっていくので、もし、心が前向きな人生を送りたいなら、まずは自室を整えることだろう。
まわりの元気で長生きしている方を見ていると、きれいに暮らしているひとり暮らしの人が多いことからもわかる。「誰にも見せないから汚くても平気」と言う人は、ゴミの中で死んでいただきましょう。
知り合いに、近所では有名な外観は豪邸、玄関入ると足の踏み場もない暮らしをしている奥さんがいた。室内は臭い、夫を除く家族全員がアレルギー。奥さんは73歳で肺がんのため亡くなった。
掃除が苦手な人は、必要なものは押入れやクローゼットにしまい、要らないものは捨てるといい。家具は最低限にすれば、掃除も簡単でゴミのたまる場所も少なくなる。モノを下に置くから汚くなるのだと、自分の経験から思う。
仏教では、掃除をとても大事な行いとしているのは、周知のとおりだ。まずは、表を箒で掃いて、水を打つ。お寺の中は畳しか見えない。何も置いていない。しかも、床や階段はピカピカに磨かれている。
そこには、リンとしたすがすがしい空気が流れている。わたしがお寺が好きな理由もそこにある。
お寺で畳に座っていると、邪念が吹き飛び、体の中の空気も入れ替わり、「前向きに生きよう」という気力がわいてくる。しかし、若輩者のわたしは、お寺を後にしたとたんに、少ない年金のことが頭をよぎり、政府に対する怒りが込み上げてくるのだ。
元気で最後まで楽しく生きるには、最も多くの時間を過ごす、自分の部屋から清める必要があるだろう。