汚く散らかっているのが嫌だから掃除する
A型の妖怪は、食べ終わったあとは、スツールからすくっと立ちキッチンへ。すぐに洗う習慣が身についているらしく、わたしのように、シンクに食器が重なっていることはない。
「お母さんっていつも、ちゃんとしてるのね」と褒めると、「だって、主婦だもの」という言葉が返ってくる。主婦でも料理も作らなければ、掃除もしない人もいるというのに、スーパー主婦、それが妖怪か。自分のためだけに家事をするのは、もったいない気がするので、パートに行っておこづかいでも稼いできたら?といやみを言うと、「お金をもらうことはしたくない!」ときっぱり拒否した。
それが妖怪の美学のようだ。とにかく妖怪とわたしは、あまりにも生き方が違いすぎるので、接点がほとんどない。
かたや主婦、かたやシングルワーキングウーマン。かたや家族あり、かたや何もなし。かたや食べものの話が好き、かたや政治の話が好き。
8時 磨く、磨く、どこまでも磨く
朝食のあとは必ず緑茶とお菓子で、朝のテレビ小説を見ている。これが妖怪の朝の至福の時間だ。そのあとがすごい。先ほども触れたが、わたしならソファに深々と座っているが、妖怪は、手にモップを持って、床を磨きはじめる。キュキュキュー、カタンカタンカタン。モップの先が、廊下の角にあたる音が聞こえる。妖怪ハウスは、妖怪が動き回っているので本当にうるさい。
ダスキンと50年前から契約していて、定期的にモップと雑巾が届くので、それで磨くのだ。しかも妖怪は、どこにもほこりが見当たらなくても、毎日磨いているので、室内はいつもピカピカだ。同居しはじめたときは、朝のそうじの音に、1階に住みこみのお手伝いさんがいるのかと思ったほどだ。
掃除機はさすがに重いようで、掃除機をかけるときはパートの人に頼んでいる。娘に「掃除機、かけてくれる?」と頼まないところがえらいのか、勝気なのか。この妖怪は男性には甘えるが、娘には甘えない。
一方、気ままな娘は、1週間に一度ほどクイックルで掃除はしているが、ダスキンモップはほとんど使ったことがないので、同じ床材でありながら、一階と二階ではその光沢に明らかなちがいが出ている。
妖怪によると、汚く散らかっているのが嫌だから掃除しているだけで、別にきれい好きじゃないとのたまう。
仕事で他人のうちにあがることが多い電気屋さんによると、「こんなにきれいな家はみたことがない」そうだ。妖怪は「これが普通よ」というが、電気屋さんは「いやいや、外観が立派な家でも、家の中は、ひどいもんですよ」と笑う。
掃除がこれほど行き届いている家は、日本ではまれのようだが、欧米では当たり前だ。でも、きれいな家は風水的にもよさそうだが、妖怪の娘も息子もひとり身なのはなぜかしら。