巧妙な手口で狙われている「親の金」
シニアマネーを狙う犯罪
「高齢者ほど金持ち」とよく言われます。実際は、どうなのでしょう。
「平成30年版高齢社会白書(概要版)」によると、2人以上世帯の貯蓄現在高の平均値は1820万円。対して、世帯主が60歳以上の世帯のそれは2385万円と、約1.3倍です。さらに、同世帯では貯金現在高が4000万円を超える世帯は約18.6%。つまり、5世帯のうち約1世帯は、4000万円以上の貯えがあるというデータです。
が、これはあくまで、平均という数字上のこと。ひとり暮らしの高齢者(65歳以上)世帯は、無年金や低年金の世帯が多く、生活保護を受ける人は増え続けています。私の感触では、お金のある資産家の方の貯蓄額が影響して、実際よりは多い数字のような気がします。
いまの60代は退職金などの上乗せがあるものの、教育資金で使い果たす人もいますし、まだまだ教育ローンや住宅ローンの支払いが続くために、定年退職後も働かざるを得ない状況にあります。
再雇用、再就職では、それまでの給与に比べて半分近くに減収。そのため、退職金を取り崩す家庭も多く、老後資金となる預貯金は、少ないのが現状です。
しかし、団塊世代以上の年代ですと、前述のデータに近い資産を保有しているのは間違いなさそうです。だとしたら、この先、親が要介護の身となっても、子ども世代に負担がかかることはないだろう。そう思うかもしれません。
しかし、お金があると思えばそれを狙う人たちがいるもの。その最たるものが、オレオレ詐欺や架空請求といった特殊詐欺を働く輩(やから)です。
特殊詐欺の被害件数は依然として増え続け、警察庁の発表(広報資料「令和元年上半期における特殊詐欺認知・検挙状況等について」)によれば、2019年上半期の特殊詐欺の認知件数は全国で8025件、総被害額は146億1000万円。件数、被害額とも前年同期に比べると減っていますが、それでも1日あたり約8069万円が騙し取られているというのが現状です。
そして、被害者に占める高齢者(65歳以上)の割合は82.2%。おもに親族を装って騙す「オレオレ詐欺」に限ると、97.2%が高齢者。詐欺グループが、最初から高齢者を狙っていることは明らかです。