詐欺の被害に遭うのは認知症の人だけじゃない
一般的には「詐欺の被害に遭うのは認知症の人だろう」というイメージが強いようですが、必ずしもそうではありません。警察庁発表の別のデータでは、認知能力があり、なおかつ「どちらかといえば」を含め「自分は被害に遭わないと思っていた」という人が95%もいました。
つまり、高齢者の誰もが特殊詐欺の被害に遭う可能性があるのです。「うちの親に限って」などとのんきに構えてはいられません。
先日、私が相談を受けていたMさん(50代・男性)のもとを訪ねていた時のことです。Mさんの70代の母親も含め3人で話をしていると、電話がかかってきました。母親が受話器を取り、言葉を交わしているので、私たちは彼女の知り合いからの電話だと思っていました。ところが、彼女が「ああ、ここにいるけど」と、振り返って息子の顔を見ながら電話の相手に言っているのです。
「!」
Mさんと私は、目を合わせました。電話の相手が「オレオレ、オレだけど」と言ったに違いありません。
「母さん、それは詐欺だよ!」
幸い、息子本人がその場にいたので彼女は難を逃れましたが、詐欺の電話はこんなふうに普通にかかってくるのだと私はあらためて思いました。しかも、彼女は同年代の中でも「しっかりしている人」なのに、その電話に明らかに動揺していたのです。
ごく普通に暮らしている高齢者でも詐欺グループに狙われ、しかも高い確率で騙されてしまう。これほどオレオレ詐欺についてのニュースが流れ、警察や自治体も「詐欺に遭わないように」と注意を喚起しているのにもかかわらず、多くの高齢者が被害に遭い続ける背景には、詐欺の手口がますます巧妙化していることがありますが、それだけではありません。高齢者特有の心理が働いて「まんまと」騙されてしまうのです。
うちの親は貯金がたくさんあるから大丈夫だろう、などと安心してはいられません。一瞬にして失う可能性もあるのだと、肝に銘じておいてください。