相続発生時、片親違いのきょうだいなど「想定外の相続人」の存在に驚くケースは、さほど珍しくありません。しかし、独身のきょうだいがいる場合、その人が亡くなると、親の相続時に解決したつもりの「家族の問題」が意外な影響を及ぼすことがあります。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

羽振りがよかった時代の父が残した「家族の問題」

今回の相談者は、60代の専業主婦の後藤さんです。70代の独身の姉が亡くなったため、その後の相続手続きについてアドバイスがほしいとのことでした。

 

後藤さんは3姉妹の中間子です。姉は高校を卒業後、数年間の会社勤めの経験があるものの、実家で両親と同居しながら、ずっと家業の小売業に携わってきました。両親はかなり前に亡くなっていますが、その後、姉ひとりで家業を切り盛りし、業績も順調だったといいます。

 

 

姉の財産は、約10年前に母親が亡くなった際に相続した自宅と預貯金です。後藤さんと末っ子の妹は、20代で結婚して以降、それぞれ実家を離れています。姉妹の関係は良好でなにも問題ないのですが、じつは、姉妹以外の相続人の存在があります。

 

後藤さんの父親は、かつて会社を経営していたことがあり、当時は金銭的にもかなり余裕がありました。その際に婚外子をもうけ、認知もしています。異母きょうだいの存在は母親から聞いてはいましたが、当然会ったことはなく、きょうだいという感覚もありません。

 

一時は羽振りがよかった父親ですが、次第に経営が悪化して事業をたたむことになりました。その後、後藤さんの母方の実家の支援を受けて小売業に転じましたが、商売が軌道に乗る前に急病で亡くなりました。

 

父親が亡くなったときに、どのような内容で相続手続きが行われたのか、後藤さんは詳細を把握していないそうです。とはいえ、以降も姉と母親は変わりなく、自宅で暮らしながら小売業を継続してきました。母親が亡くなった際の相続で、自宅は姉の名義となりました。後藤さんと妹は、母親の預貯金を数百万円ずつ相続しました。

姉妹は「婚外子の存在」を知っていたものの…

後藤さんの姉はずっと独身で、子どももいません。そのため、姉の相続人はきょうだいになります。父親が認知した戸籍上のきょうだいも、後藤さんと妹と同じく、姉の相続人という立場になります。

 

姉は持病もなく元気だったため、本人はもちろん、後藤さんも妹も相続について考えたことなどありませんでした。

 

「とても元気な人だったから、まさかこんなに急に亡くなるなんて、だれも想像していませんでした。本人がいちばん驚いていると思います。そんな状況ですから、遺言書も当然準備していなくて…」

 

姉の葬儀は、後藤さんと妹の家族でこぢんまりとすませましたが、困ったのは相続手続きです。遺言書がないため、異母きょうだいも交えた遺産分割協議が必要になるからです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

後藤さんと妹には、異母きょうだいについて知る手がかりがないため、行政書士に依頼して戸籍を取り寄せてもらいました。すると、後藤さんより少し年下の異母きょうだいは、すでに亡くなっていることが判明しました。ただし、亡くなった異母きょうだいには子どもが3人いるため、その子どもたちが異母きょうだいの代襲相続人になります。

 

「会ったこともない方たちですから、途方にくれてしまいまして。そうしたら、知り合いが弁護士を紹介するといって、引き合わせてくれたんです。でも、『まずはご自分たちでお手紙を書いてみたらどうでしょうか?』というアドバイスをくださったきりで、私も妹も、どのように対処すべきか困ってしまって…」

 

後藤さんはこの問題に弱り果て、筆者の事務所を訪れたとのことでした。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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