とくに親密にしていた姪に「あなたが養女になってくれれば…」といいながら亡くなった資産家の叔母。残念ながら養子縁組は実現せず、遺言書も残せませんでした。そんな叔母の相続人はなんと16名。申告期限までにこの人数をまとめ、相続手続きを完了させることはできるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

独身の叔母の財産は、自宅・複数の収益物件・現預金

今回ご紹介するのは、埼玉県の地主、山田家の相続の事例です。相続人は16名と異例の多さで、10ヵ月の相続税の申告期限に全員の意向をなんとかまとめた、怒涛のプロセスでした。

 

山田家は代々農家を営んでおり、自宅周辺に多くの畑を所有していました。しかし、時代の流れのなかで自宅周辺は開発が進み、区画整理されたことで、所有していた農地もその多くが宅地に。周辺は緑豊かな田園風景から、閑静な洒落た住宅地へと変貌を遂げました。また、私鉄の駅が新設されたことで、土地の価値は以前の数倍に跳ね上がりましたが、とくに山田家の実家近辺は新設された駅に近く、価値の高い土地となりました。

 

 

そんな山田家の三女・仁美さん(70代)が亡くなりました。仁美さんはずっと独身で子どももいませんでした。音楽大学卒業後、音楽教室でピアノ講師をしていましたが、生前の両親は、7人の子どもたちのなかでただひとり独身の末娘を気にかけており、父親が亡くなった際には、仁美さんのための一軒家のほか、駐車場、貸店舗、低層マンションといった複数の収益物件を相続させました。そのため、仁美さんはかなり多くの家賃収入を得ており、生活にはゆとりがありました。

 

マイペースに暮らしていた仁美さんですが、70代に差し掛かると持病が悪化し、入退院を繰り返すようになりました。いよいよ身の回りのことができなくなると、仁美さんのすぐ上の兄で、山田家の三男・彰浩さんの娘、真理子さん(仁美さんの姪)が面倒を見てくれました。

 

彰浩さんは最初の妻に先立たれて再婚していますが、その際、彰浩さんの長子の真理子さんは後妻とうまく折り合えず、仁美さんが間に入ってとりなした経緯があります。そのため、たくさんいる甥姪のなかでも、真理子さんとはとりわけ親密でした。彰浩さんは、先妻との間に真理子さんと弟の2人、後妻との間に妹2人の、合計4人の子どもがいます。

 

仁美さんは病床で、真理子さんを養子にしたいとの希望をたびたび口にしていましたが、残念ながら実現できず、また、病状の悪化が早かったこともあり、遺言書を残すことができませんでした。

 

ここで山田家の相続人関係図を整理してみましょう。

 

山田家・相続関係者と資産状況

●被相続人
山田家の三女・仁美(70代、配偶者・子どもなし)

●相続人
長女(由美):故人・代襲相続人となる子ども 3人
長男(謙一):故人・代襲相続人となる子ども 3人
次女(雅子)
次男(雄二):故人・代襲相続人となる子ども 3人
三男(彰浩):故人・代襲相続人となる子ども 4人
       (※仁美さんの面倒を見た姪、真理子を含む)
四男(幸雄):故人・代襲相続人人となる子ども 2人

●資産内容
自宅、駐車場(2ヵ所)、貸店舗、低層マンション1棟、現預金数千万円

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営80代するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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