形式や内容に不備があると、せっかくの遺言書も無駄に
ただし、遺言書には注意点があります。もし作成しても、法律が定める形式的な要件を満たしていなかったり、曖昧な内容になっていたりすると、無効になってしまうことがあるのです。また、上記のAさんの場合も、Aさんに全財産を相続させるような内容の遺言書になっていると、兄はAさんに対して「遺留分」(最低限相続することができる割合のこと)を主張する可能性があるため、紛争の種が残ってしまいます。
さらに、「遺言執行者」という「遺言の内容を実現する人物」を遺言書で指定しておかないと、金融機関によっては、解約に際して相続人全員の印鑑証明書を要求することもあります。そのため、遺言書の作成に当たっては、書式や記述する内容をしっかり考えなければなりません。
相続について懸念をもつ方の多くは、実際のところ、「遺言書を作る前段階」で行動が止まっているのではないでしょうか。作成したほうがいいと頭ではわかっていても「いつでも作れるから…」と、あと回しにしてしまいがちです。
相続における遺言書の重要性は極めて高く、遺言書は相続人の将来と心を守る、大切な手段なのです。本稿の事例を遺言書作成のきっかけにしていただけると幸いです。
國丸 知宏
弁護士法人菰田総合法律事務所
弁護士
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走