「時間・お金・体力」の消耗は相当つらい
Aさんの場合、遺産分割調停で決着がつくまでに5ヵ月もの時間を要し、3ヵ月の遺産分割協議と合わせると、合計8ヵ月もの時間がかかってしまいました。しかし実際は、これでもまだスムーズに解決できたほうであり、解決まで年単位で時間が掛かるケースも珍しくありません。
ちなみに、調停でも決着がつかなければ、「遺産分割審判」により、裁判官が遺産の分割について決定します。この場合、解決までにさらに数ヵ月かかることを覚悟しなければなりません。
Aさんの場合、遺産分割協議の段階で弁護士に依頼したため、協議・調停とも弁護士費用が必要でした。費用は弁護士によって差があるほか、遺産の総額によっても違ってきます。とはいえ、遺産分割協議から調停までのすべてを依頼するとなれば、最低でも50万~100万円は覚悟しなければなりません。遺産の総額が億単位になれば、弁護士費用だけで数百万円にのぼることもあります。
さらに、解決までの間のAさんの日常は、かなりストレスフルなものとなりました。他人と揉めるのもしんどいですが、身内との諍いとなればそれ以上です。それに、最終的な決着がついたとしても、兄との関係修復は極めてむずかしいでしょう。
遺産に関する話合いは、時間や費用を使うだけでなく、精神的な負担や親族関係の亀裂など、多くのマイナスを伴います。高齢の親に向かって「遺言書を書いてほしい」とはいいにくいかもしれませんが、Aさんのケースを考えるなら、思い切って申し出ることも必要だと思います。また、親としても、自分亡きあとの子どもたちを思うなら、「あとは野となれ…」と放置するのではなく、しっかりと遺言書を書きのこし、子どもたちの生活や関係性に配慮しておくべきではないでしょうか。
もし遺言書がなかったら…
→遺産分割協議が必要(話がつかなかったら調停も)
①時間がかかる!
②費用がかかる!
③ストレスでつらい!
遺言書があると、どれだけの負担が軽減できるのか?
では、Aさんの母親が遺言書を遺していたら、どのような違いがあったのでしょうか? 時間を巻き戻してみましょう。
Aさん:「はい、遺していました。遺品の整理をしていたとき、父の仏壇の引出しから出てきたんです」
弁護士:「見せていただけますか?」
Aさん:「どうぞ」
Aさんが持参した遺言書を確認すると、体裁(形式面)的にも問題のない状態で、キチンと作成された書類が出てきました。書面には、遺産である預金約3,000万円のうち、1,000万円は兄に、残りの約2,000万円をAさんに相続させる、という内容がかかれていました。
母親は、最後まで面倒を見てくれたAさんに多く渡す内容にしていました。兄になにも残さないと兄妹で揉めると思ったのでしょうか、兄にも配慮した内容でした。
Aさん:「わかりました。ところで、預金の解約手続はどうすればいいのですか?」
遺言書がある場合、基本的には遺言書通りに分配することになります。具体的にいうと、遺言書を使って亡くなった方の預金の解約や不動産の名義変更も行うことができます。そのため、遺産分割協議は不要となり、何ヵ月もかかる話し合いや、話し合いに伴う費用、なにより無用な争いも生じません。
上記のAさんの場合も、兄がなんといおうが、母親の遺言書の通り、兄に1,000万円、残りの預金はAさんがすべて相続することになります。
話し合いが不要なので、時間も費用もかかりませんし、なにより兄と争わなくてすむので、ストレスも軽減されます。
もし遺言書があったら…
→遺産分割協議は不要
①時間がかからない!
②費用もかからない!
③ストレスも少ない!
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