相続における「遺言書の重要性」を理解している人は、決して多くありません。親は自分の死後、まさか子どもたちが熾烈な相続争いを繰り広げるなど、想像してもいないのでしょう。しかし、遺言書がなければ、そのリスクは一気に跳ね上がります。相続問題の解決に定評がある、弁護士法人菰田総合法律事務所の國丸知宏弁護士が、事例をもとに解説します。
遺言書がないばかりに、壮絶なトラブルが…
超高齢社会の日本では「終活」の重要性が注目されています。それに伴い「遺言書」に関心を持つ方も増えているといえます。自身の遺言書作成について考えるのはもちろん、両親が元気なうちに遺言書を書いてもらいたい方もいるはずです。
しかし残念ながら、遺言書の重要性について、正しく周知されるところまでは至っていないようです。「遺言書があれば相続がラクになるらしい」という程度の認識で、遺言書がないばかりに壮絶なトラブルが起こるリスクまで理解している方は、決して多くはないのです。
本記事では、遺言書がない遺産分割の事例から、遺言書の重要性や必要性を見ていきましょう。
母を看取った妹と「われ関せず」だった兄が諍いに
法律事務所に寄せられる相談としてよくあるのは、下記のようなケースです。
Aさん:「母の四十九日が過ぎたら、兄が突然相続についての一方的な要求を突き付けてきまして…。〈長男の俺が全部相続するべき! お前は私立大学に行ったんだから相続させるものなんかない!〉と怒鳴り散らすんです」
弁護士:「なるほど。お母様は亡くなるまで、どのように暮らしていましたか?」
Aさん:「10年前に父が亡くなって以降、私の自宅に呼び寄せ、同居して面倒を見てきました。その間、遠方に暮らす兄は盆正月に帰ることもなく、電話すら寄こしませんでした。だから、兄の意見に納得できません。子どものころは仲がよかったのですが…」
弁護士:「ところで、お母様は遺言書を遺されていましたか?」
Aさん:「いいえ、遺していません…」
この事例のAさんのように「遺言書がない」場合は、どうやって対処すべきなのでしょうか。
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弁護士法人Nexill&Partners
弁護士
福岡県宗像市出身。九州大学法科大学院修了後、2017年弁護士登録。同年に弁護士法人菰田総合法律事務所(現:弁護士法人Nexill&Partners)入所。
入所当初から家事事件を中心に経験を積み、現在は相続分野に注力する。また、2020年1月に博多マルイ内にオープンした相続相談専門店「相続LOUNGE」の相談・実務対応にも携わる。
幼いころに弁護士と関わる機会があり、それをきっかけに弁護士を目指したことから、第一に依頼者目線を大切にしており、「話をしっかりと受け止めてくれる」「説明が丁寧」との声が多い。
依頼者の利益を最大限に実現することが自身の弁護士としての責任だと考え、法的な面だけでなく、その裏側にある依頼者の想いを大事に、二人三脚での問題解決に努めている。
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