土地が沈下する仕組みは「豆腐の水抜き」と同じ
豆腐の水を抜く時には、重しを置いて時間をかけて水を押し出していきますね。短時間では、重しの重みが豆腐の下まで伝わりづらい。同様に、せっかく締め固めの作業を行っても、充分な深さまでその効果が及んでいないことがあるのです。そのような場合、建物の重量によって、残っていた余分な空気や水分が、長時間かけてさらに周囲に逃げていき、結果、土地はさらに沈んでいきます。このようにして起きる沈下のメカニズムを「圧密沈下」と呼びます。圧力によって、土の粒子の密度が高まり、体積が収縮するために沈下が起きるという仕組みです。
先ほど、地盤とは泥や砂の粒子と、その間の水や空気などからできているといいましたが、その粒子の大きさによっても、沈下の発生具合は違ってきます。
圧密沈下が起きやすいのは、多くの場合、粘土質の地盤です。土の粒子が細かい分だけ、間に含まれる空気や水は抜けにくくなっています。強い圧力をかけてもその時すぐではなく、長い時間をかけてじわじわと抜けていくのです。
土の粒子が細かい土地の代表例は、たとえば、もとは田畑であった土地。もちろん、農地として作物を育てる上では、たっぷりと空気や水を含んでいることは長所であり、また、農家の人たちは長い年月をかけてそうした「土」を育ててきたわけですが、そこに建物を建てて利用しようとすると、それが裏目に出てしまいます。
一方で、砂質の地盤の場合、圧密沈下はさほど起こりません。「砂地は水はけがよい」といいますが、要するに、粒子が粗い分、水や空気が簡単に抜けてしまうからです。
しかし、「水が抜けやすい」土地は、反面「水が入りやすい」。特に地下水位の高い埋め立て地などでは、地震の際に水分を多く含んだ砂質の地盤が揺さぶられ、砂の粒子同士のつながりが絶たれて水の中で漂うような状態になってしまうことがあります。これがよくいわれる「液状化現象」です。
液状化現象が起きると、地盤は支持力がなくなってしまうため、やはり地上の建物は傾いたり倒れたりします。
このように、地盤沈下が起きる原因にはさまざまなものがあるのですが、いずれにせよ、建物全体が均等に沈んでいるのであれば、まだ大きな問題にはなりません。しかし、ほとんどは、ひとつの建物でも、どこかに重さが集中していればそこの荷重だけが大きくなり、沈み方が速くなります。また、地盤そのものの形質の微妙な違い、周辺の条件などによっても、沈み具合は違ってきます。
たとえば、丘陵地の斜面に造成を行った場合、土地の片側は地山を削った自然の地盤であっても、もう片側は盛土(山を削った土で埋めた土地)だったり、または全体が盛土でも、その下にある自然の地盤までの深さが不均等だったりということもあります。
こうしたさまざまな原因によって、部分的にまちまちの深さで沈んでしまうことを、「不同沈下」または「不等沈下」と呼びます。
同じ建物の中で、場所によって大きく沈んだり、沈まなかったりしているのですから、さあ大変。建物全体が傾いてしまったり、あるいは床面がでこぼこになってしまったりして、建物の機能としては、かなり困ったことになります。