日本の7割は山地など住みにくい場所
それによりますと、横浜市それ自体が海岸部を除いてほとんど丘陵地であるという条件はあるものの、市内の大規模盛土造成地の数は3558ヶ所。この横浜市の例だけを見ても、大都市周辺や郊外の丘陵地での“造成密度”の高さにはまったく驚かされます。
そもそも、日本の国土は起伏に富み、海岸線は入り組んでいます。大まかに言って、日本は約7割が山地や丘陵地であり、平野部は残り3割に過ぎません。もちろん、そうした平野部の中には、関東平野をはじめそれなりの面積を有しているところもあります。しかしまた、それら平野部のすべてが人の思いどおりになる土地とは限りません。短く勾配が急な日本の河川は歴史的に氾濫を起こしやすく、そのため平野部の中でも河川に近い地域の地盤は軟弱なところが多くあります。
また、一言で「平野」といっても、どこまでも平らな土地であるとは限らず、先の横浜市の地形でもわかるように、たとえば東京や神奈川など、南関東では少し内陸に入ると、多摩丘陵と呼ばれる、緩やかな起伏が連なっています。
こうした、狭く複雑な起伏を持つ国土の上に、世界でも上位ランキングに入る人口密度と、現在、多少揺らいでいるとはいえ世界トップクラスの経済力と、世界中で高い信頼性を勝ち得ている製品を供給する工業力が詰め込まれているのが、現在の日本という国なのです。
かつての自給自足度の高い田畑と、豊かな生活物資を供給してくれる雑木林の丘陵や山が連なる、のどかな光景を維持していられるわけがありません。つねに賛否両論があったと思いますが、先述のように大胆に、国土をつくり替えていく必要があったのです。
こうして、「使える土地」がつくられてきた
こうした土地を、建物を建てて利用するためには、山を削り、窪んでいるところには土砂を入れ、それを均(なら)していく必要があります。その際には土木・建築用の重機を使い、盛土に対して圧力や振動、衝撃を加えて、建物を支えていくために充分な強固さを持つ地盤に仕上げていきます。これを土木の用語で「締め固め」と呼んでいます。
土地や地面というと、土や砂の粒が集まっているだけと想像する人も多いかもしれません。しかし、実際には違います。「泥」も「砂」も「石」も、もとをただせば基本は岩石が壊れた小さな粒で、その大きさで呼び分けているに過ぎません。そして、それらの粒子に加えて、ミクロで見れば、その隙間を空気や水が埋めているのが「土」なのです。
一度掘り返し、新たに人工的に盛り上げた土は、もとからの地盤に比べて土や砂の粒子同士の間隔が緩く、間に多くの空気や水を含んでいます。締め固めとは、その粒子の間に必要以上に含まれる空気や水を強制的に追い出すための作業です。
地盤が軟弱で、締め固めだけでは不安がある場合には、地盤改良を行ったり、深く基礎を打ち込んだりします。しかし、大きな問題がない限りは、多大なコストがかかる特別な基礎は築かれていないのが普通です。
とはいえ、この締め固めだけで本当に充分な“確かさ”を持った立地条件が確保されたかといえば、実はそうでないことも多いのです。土地を造成し、建物を建てる時点では充分なスペックを備えた土地に見えても、建物を建てて何年か経つ間に、次第に土地が沈下してきてしまうということがありえます。