日本の建物の9割が床の歪みの問題を抱えている!?
地盤に関するヒントは、風景ばかりとは限りません。たとえば東京の北区に赤羽台という土地がありますが、この土地の名の由来は、関東ローム層の赤土でできた台地だからとか、台地に夕陽が当たって翼を広げたように赤く燃えて見えるという説などがあります。いずれにせよ、これは台地地形を示す地名なわけです。その他にも、各地には「〜台」とか「〜岡」という地名は数多くあります。
先に述べたように、丘陵のふもとや斜面などでは盛土が組み合わされたりしますが、台地の上のもともとの地山部分の地盤は、大抵の場合、しっかりしていますから、こうした地名を聞いただけでも、私などは「あ、ここにはわれわれの仕事はなさそうだな」と思うものです。実際、まだまだ土地に余裕があった時代に建設された古い工業団地には、こうした丘陵地のしっかりした地盤の上にあるものも多く、沈下のトラブルともほとんど無縁だったりします。
逆に、「〜谷」とか「〜池」などという地名は、もともと窪地だったり、湿地だったりした可能性が高いところです。現在は一見して平坦で乾いた土地でも、さて、実際はどうかなと、ちょっと気をつけてみる必要があるわけです。
東日本大震災のあと、縄文時代の遺跡などは、津波や地すべりなどの被害を受けやすい場所を実にうまく避け、しっかりした地盤の上にあったという話をいくつか聞きました。
しかし、少し考えればこれは当然のことです。この時代の人たちには、現代のように大がかりな土地の造成技術はありません。じめじめした土地や足場の悪い土地はそもそも利用できず、最初からしっかりした土地を選ぶ必要があったのです。
現在のわれわれは、どんな土地でもとりあえず使えるようにしてしまう技術がある分だけ、より大きなリスクも背負ってしまっているといえるのでしょう。
一説には、日本国内の建物の何と9割が、大なり小なり、地盤に起因する歪みの問題を抱えているといいます。その問題が現時点で顕在化していないとしても、将来的に何らかのトラブルが起きる可能性がないとは言い切れないのですから、油断は禁物です。