
あの手この手で税金を減らそうとする社長たち。必死に稼いだお金なので節税したいという気持ちは当然ですが、税務署から捜査の手が入り、経営が楽になるどころか危機的な状況に陥ってしまうこともあるのです。本記事では、元・国税調査官の辻正夫氏だからこそわかる「究極の節税」を紹介します。
「マルサ」はある日、突然やってくる
ピンポーン――。午前7時。従業員20名ほどの製造業を営む後藤さん(仮名)が、いつものように出社後のコーヒーを楽しんでいると、突然インターホンが鳴った。
営業開始は午前9時。それより早く人が訪ねてくることはほとんどない。
「誰かな、こんな時間に…」
後藤さんが訝いぶかしげに事務所のドアを開けると、スーツ姿の男性が「後藤さんですね。国税局査察部です」と捜査令状を見せるやいなや事務所のなかにドカドカと入り込んできた。
訳もわからずその場に立ち尽くす後藤さんを横目に、スーツ姿の捜査官たちが次々と押し寄せ、事務所のいたるところから書類やパソコンを持ち出していく。
狭い事務所はすし詰め状態になり、それから夜9時頃まで延々と調査が続いた。後藤さんは膝が崩れ落ちそうになるのをこらえながら、ただ呆然と見守るしかなかった…。