納税資金準備のため、すべての資産を失う
脱税で有罪になったことで、後藤さんは2つの問題を抱えることになりました。
まずは納税資金の問題です。脱税行為により、後藤さんには1億9800万円の追加の納税と罰金が科せられたのです。本来であれば、海外での投資資金を解約すればそれほど苦労もなかったのですが、コーディネーターを介して契約した投資からの回収は困難な状況でした。
しかし、事情がどうであれ追加納税分の1億9800万円は支払わなくてはなりません。後藤さんは自身の預貯金を全額引き出したうえ、国内に所有していた複数の不動産をすべて売却。それでも資金が不足したことから、最終的に家族の支えである自宅まで手放すことになったのです。
もうひとつの問題は、社会的な信用です。刑事告発されると、その内容が新聞に掲載され、これまで積み上げてきた信用が失墜(しっつい)します。そのため、後藤さんは自身の手では事業の再建は不可能と判断し、息子に会社を譲って組織体制を一新しました。現在、会社は新体制で事業を再開し、取引先との信用をゼロから築き上げている最中です。
父親の会社を継いで10余年、休む間もなく必死に働き、「そろそろ後継者の息子に事業を譲って、後はゆっくり旅行でもしようか」と妻と話し合っていた矢先の出来事でした。ちょっとした気の緩みからすべての資産を失い、家族まで路頭に迷わせることになってしまったのです。
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