新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ステイホームが呼びかけられる昨今。通販などのサービスを利用することが増えた方も多いのではないでしょうか。加えて、東日本大震災や熊本県を中心に襲った豪雨を受けて、物流ネットワークの重要性にも近年注目が集まっています。本連載では、「物流」の歴史を紐解きながら、物流会社がどのような役割を果たしているのかについて見ていきます。今回は江戸時代から明治初期までの変遷を中心に解説します。

当たり前すぎて意識されることが少ない「物流」

私たちの日々の生活を支える重要な社会インフラの一つである、物流。

 

もはや当たり前になっている現代の便利な生活は、全国に張り巡らされた物流網と、24時間止まることなくモノを運ぶ物流会社があってこそ成り立っています。もし物流会社の業務が一斉に止まってしまうような事態となったら、途端に経済活動も止まり、人々の生活が立ち行かなくなります。

 

いかなるときもモノを運び続け、社会を支え続ける。

 

それが「物流会社の矜持」であり、その思いを胸に全国に散らばる何万社もの物流会社が、現在も昼夜を問わず奮戦しています。

 

現代だけではなく、物流ははるか以前から日本社会を支え続けてきました。

 

ただ、そうした事実は、人々に普段なかなか意識されることはありません。

 

昨今では「送料無料」や「時間指定」、「再配達」のサービスが当たり前となり、物流が人々にとって「私たちの生活を支えている」という意識はあまりなく、「当然あるべきもの」となっています。

 

そのことが垣間見えたのが2020年のコロナ禍でした。

 

当時、新型ウイルスの感染に人々が恐れるなか、自宅を訪れる宅配業者に対して、過剰に恐れ拒否したり、接触を拒んだりする人がいたと聞きます。

 

自らも感染するリスクを承知で「それでも物流を途絶えさせるわけにはいかない」と必死で荷物を運ぶスタッフへのこうした扱いには、胸が痛みました。

 

世の中の心ない対応の原因は、未知のウイルスに対しての恐怖心だけでなく、そもそも物流がいかなるものか、物流業界ではどういった人がどんな思いで働いているかが、あまり知られていないからではないか――。

 

運送会社の経営者としての視点から、日本の運送業がどのように発展してきたのかを解説していきます。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

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※本連載は、鈴木朝生氏の著書『物流の矜持』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

物流の矜持

物流の矜持

鈴木 朝生

幻冬舎

大正3年、まだ大八車や馬車が物流の主な手段だった時代から、地域とともに歩み、発展を遂げてきた丸共通運。その歴史から、物流業界の変遷、日本の発展を振り返る。 丸共通運は大正3年に創業し、まだ大八車や馬車が物流の主…

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