「物流の概念」はアメリカからやってきたものだった!?
日本の交通網が整備される大きなきっかけとなったのが、1964年に開催された、東京オリンピックです。
東海道新幹線の開通、名神高速自動車道の延伸、浜松町―羽田間を結ぶモノレールが完成、首都高速道路1号羽田線、4号新宿線の整備……。これらの計画のすべてが、オリンピックに合わせて進行しました。
こうした動きは、日本が国をあげて物流網を整備した、と見ることもできます。道路に加え湾港の整備も進め、物流の拠点となる設備を作っていったことで、日本の物流環境は大幅に改善されていきました。
実は「物流」という概念がアメリカから入ってきたのも、このころです。
大量生産、大量消費の時代となり、生産され続けるモノをどのようにさばいていくかというのが、産業上の課題となりました。
大量にモノをさばくのに、人の手に頼っては限界があります。輸送の現場ではフォークリフトをはじめとした荷役機械の導入が進み、より効率的にモノを運ぶ仕組みも検討されるようになりました。そこで注目されるようになったのが、物流という概念でした。
物流とは「物的流通」の略であり、企業が消費者へと商品を届ける過程のことです。ただモノを運ぶのではなく、保管や包装など、輸送で求められる要素を含みます。物流の5大機能とされているのが、輸送、保管、荷役、包装、流通加工であり、これらをいかに効率化するかが、企業の課題となってきました。
単品大量生産の行われる典型的な商材であるビールを例にとると、キリンビールでは1964年にフォークリフトを導入するとともに、荷物を載せるパレットの規格を規定。翌年には、荷物を出発地から目的地まで同じパレットに載せて輸送、保管する「一貫パレチゼーション」を標準化しました。このような取り組みにより物流を効率化した結果、大量の商品を迅速に出荷できるようになったのです。
経営マネジメントの父といわれたピーター・ドラッカーは、1962年の論文のなかで、「物流とは最後の暗黒大陸である」と言っています。経営課題を論じる際には営業力や開発力にばかりスポットがあたり、物流への投資が後回しになってしまいがちな状況を、「最後の暗黒大陸」と表現したのです。
日本では、物流の概念が次第に一般化していくなかで、物流コストは「第三の利潤源」として注目されるようになり、大量生産大量消費の時代に適応するべく、企業の多くが物流改革に着手しました。
そうした物流改革は、モノの運び手である運送業者との連携なしには実現しません。物流業者が、企業の成長を裏で支える「縁の下の力持ち」であることは、昔もいまも変わっていません。
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