バブル崩壊で沈む景気、そこに阪神・淡路大震災が…
1991年を過ぎると、さまざまなところで「泡のはじける音」が聞こえるようになりました。1975年以来上昇を続けてきた地価が徐々に下がり始め、その後、高級絵画やゴルフ会員権といった資産の値もどんどん下落……。
そうしてバブル経済は崩壊し、1993年前後から、日本は「失われた20年」と呼ばれる長い不景気のトンネルに入りました。
物流業界では、1991年から景気の減速が始まり、翌年、翌々年と国内貨物輸送量は下がり続けました。
また、国内景気の低迷によって、荷主である製造業や流通企業が物流コストの削減に走り、バブル期とは一転して、運賃が下がっていきます。物流2法の規制緩和による競争の激化も、運賃の下落に拍車をかけました。
そのあおりをもっとも大きく受けたのは、中小の運送事業者でした。保有トラックが10台に満たない小規模な業者は、社員に給料を払うことも厳しいような状況に追い込まれていきました。
そんな厳しい時代のなか、丸共通運は、幸いにもバブル崩壊の余波をさほど受けることなく、事業を続けていました。
当時の経営の柱となっていた飼料と食品の輸送は、不景気下でも必ず一定の需要があるものです。オイルショック時と同じように、輸送量はそこまで落ち込みませんでした。
バブル崩壊で沈む日本の景気……それにさらに追い打ちをかけるように、悲劇が起きます。
1995年1月17日、淡路島北端付近の深さ16キロメートルを震源とするマグニチュード7.3の地震、「阪神・淡路大震災」が発生しました。
都市直下型地震であったことから、その被害は甚大でした。
死者約6434人、負傷者約4万3792人。被害を受けた都市の広い範囲で停電、断水し、ガスの供給も絶え、家屋倒壊は10万戸を超えました。
阪神高速や新幹線の高架線がおよそ600メートルに渡って崩れ落ち、大規模な液状化が発生、大阪―姫路間の東西100キロメートルの都市部が被災した結果、日本の東西を結ぶ鉄道・高速道路・一般道が長期間寸断されました。
国土庁(現・国土交通省)による概算では、震災の被害総額が9兆6000億円にも及び、そのうち鉄道、港湾などの運輸関連施設の被害額が約1兆6000億円と、全体の約17%強を占めました。
鉄道はJR西日本、阪急電鉄、阪神電鉄など合計13社の路線において、高架橋落橋、トンネルや駅舎の損壊などの大きな被害が発生しました。ダメージが大きく、地震発後に運行が再開できなかった区間は、新幹線が京都―岡山間の219キロ、JR在来線が123キロ、民鉄線が296キロ、合計638キロに及んだといいます。
港湾施設は、兵庫県、大阪府、徳島県に渡り、24港で被害が生じました。特に被害の大きかった神戸港では、ポートアイランド地区、六甲アイランド地区のコンテナ埠頭など大半の施設が被災し、使用不可能な状態に陥りました。
幹線道路も、中国自動車道、阪神高速神戸線、湾岸線、国道2号線といった主幹道路が寸断され、物流網にも壊滅的な打撃を与えました。
トラック業界では、1183の事業者が被災。1日平均約55万トンを超える貨物が停滞し、全国的にも1日あたり最大で約3.5%以上のトラック貨物輸送量が影響を受けたといいます。その後、すぐに支援物資や復興資材の運搬が始まり、貨物輸送量は増加しています。これはひとえに、全国の物流業者が協力して災害に立ち向かい、人々の生活を支えるべく奮闘した証です。丸共通運でも、支援物資を積んだトラックを被災地区に送り、できる限りの復興支援を行いました。
輸送量は増加も、規制緩和で競争激化する物流業界
バブル崩壊、そして大震災……。
その後遺症は、1997年からさらに強く表れてきます。
1997年に増税された消費税の影響などにより、個人消費は冷え込む一方。モノが売れなければ企業の経営は苦しくなり、借金をして凌ぐしかありません。しかし銀行は、バブル崩壊以来、融資の蛇口を固く締め、中小企業への貸し出しは減り続けました。この「貸し渋り」から、倒産する中小企業が続出。失業者が増え、そうした世相に不安を覚えた消費者はさらにモノを買わなくなり……まさに負のスパイラルに陥っていました。
ヤオハン、京樽、三洋証券、山一證券といった大企業の倒産も相次ぎました。大蔵省(現・財務省)によると、1998年1月時点での不良債権の総額は76兆円にのぼったといいます。
2000年前後から、トラック業界全体としての輸送量は増加傾向にありましたが、「物流2法」による規制緩和後、事業者数が約5割増加して競争が激化、原油価格の高騰や環境規制への対応などで、厳しい状況が続いていました。
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