ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

介護が始まる前に知っておきたい介護保険のしくみ

介護保険の保険者は市区町村

 

介護保険制度の運営主体(保険者)は、市町村と特別区(東京23区)です。小さな市町村が隣接する市町村と共同で構成する広域連合や一部事務組合も保険者になることができます。

 

保険料の徴収、要介護認定、介護保険被保険者証の発行・更新、保険給付などの業務や、介護認定審査会の設置などのほか、住民である高齢者が安心して利用できるようサービスの量の確保や質の向上のための事業計画なども立てています。それぞれの保険者は事業計画をその土地に合わせて策定するので、介護を受ける地域によって、利用できる介護サービスには違いが出てきます。

 

介護で困ったことや、確認したいことがあるときの知っておくべき相談先とは。(※写真はイメージです/PIXTA)
介護で困ったことや、確認したいことがあるときの知っておくべき相談先とは。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

介護サービスを利用するには、その市区町村に住所を有することが条件

 

介護保険の加入者(被保険者)は、40歳以上の人すべてです。原則、住民票を登録している市区町村に資格要件があり、転出したら転居先に移ります。

 

注意したいのは、親の住民票は実家のままで、子の家に同居しているとか、別荘などで暮らしている場合です。介護サービスの中でも地域密着型サービスは原則、その市区町村に住民票がないと利用できません。住宅改修も介護保険被保険者証に記載されている住所地の家屋が対象です。各市区町村で独自に介護保険外の支援サービスがありますがこの利用も対象外です。別居、同居という視点だけでなく地域によって特性もあるので実家の地域、子の生活地域の情報を調べてみることをお薦めします。

 

※住所地特例:特定の施設に入居して住所を変更する場合、入居前の住所の市区町村が保険者になる制度です。施設が多く所在する市区町村に被保険者が集まり財政の不均衡が起こることを防ぐためです。住所地特例対象者はその施設所在地の市区町村が提供する地域密着型サービスや地域事業支援を利用できるようになりました。

 

介護保険料はどうやって納めているのか?

 

介護保険給付費の財源は、国・都道府県・市区町村の公費と40歳以上の保険料で成り立っています。65歳以上(第1号保険者)と40〜64歳(第2号保険者)では介護保険料の納め方が異なります。65歳以上の人は、本人や世帯の課税や所得の状況に応じて保険料に段階があり各市区町村で基準額が定められています。

 

公的年金を年間18万円以上受給している場合はそこから差し引かれますし、納入通知書で振り込むか、口座振替でも納めることができます。40〜64歳の人は、加入している医療保険(国民健康保険料、健康保険料)と一緒に徴収されます。

 

介護保険料を滞納してしまった場合

 

災害や生計維持者の死亡など特別な理由なく介護保険料を滞納すると、介護サービスを利用する際に制限が出てきます。催促状、延滞金の発生や、長期間にわたる悪質な場合には法律に基づき預貯金等が差し押さえられる場合もあります。

 

家族介護慰労金

 

現在、家族によって行われる介護は介護保険の給付対象になっていません。家族に介護された人は介護保険の公的な給付がなく、他人に頼んだ人だけが受けられるのは公平とは言えません。「家族介護慰労金」は各市区町村に申請ができ、支給額は年間10万~12万です。

 

そして、給付の条件はとても厳しいものになります。

 

●支給の条件


・要介護4~5の認定を受けた人を在宅介護している
・住民税非課税世帯である
・1年間介護保険サービスを利用していない
・通算90日以上の入院をしていない

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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