ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

一刻を争う場合は救急車で急行できる病院を

病気によって選ぶ病院は変わる

 

脳出血などの破裂系、脳梗塞など詰まる系に代表される脳血管疾患は処置のスピードが重視されますので、今いる場所から救急車で向かうのが賢明です。

 

発症から数時間であれば点滴での治療もできますが、到着が遅れると後遺症が残ってリハビリが必要になる可能性が非常に高くなります。この場合は、実家か介護者の家の近くかなどの選択をしている場合ではありません。また、癌で手術を伴う場合などは、名医を選びたいという気持ちも出てきます。

 

有名病院などの紹介本も出版されているので、それを参考に病院を選んでも良いと思います。癌も部位によって病院は異なりますので、考慮しながらピックアップして検討してみましょう。肺炎は高齢者の発症が多いのですが、治療は抗生物質の点滴です。病院や医師による治療方針に差が出にくい病気でもあります。

 

早期発見の場合は信頼する医師を、進行しすぎてしまい積極的な治療を希望しない場合などは介護者の自宅の近くの病院でなるべく毎日面会に通う、時間に余裕を持って診察を受けるなど、状況に応じて視点が変わります。これはその家族が何を優先するのかで異なる部分です。

 

 

その家庭にとって
都合の良い病院を選ぶ

 

脳梗塞や癌などは極端な例でしたが、肺炎の疑いや骨折などで病院を受診すると、そのまま入院となることもあります。要は選んだ病院が入院先となるわけです。これはその家庭によって状況が変わりますが、私がその時々で、病院を選んだ目安を紹介します。

 

●実家の近くの病院にした場合

・元気な親が入院中の世話をできる
・介護者が子の場合、その者が一時的でも実家にいれば頻繁に病院へ通える
・親が退院後も、その地域に住み続けることができる

 

●介護者の自宅近くの病院にした場合

・元気な親が認知症を患っているなど世話ができない
・介護者が子の場合、仕事をしていても自宅地域なら帰りに病院に通える
・親が退院後は、施設入居か呼び寄せて同居の可能性が少しでもある

 

また、施設に入居している場合は、その施設のある地域の病院に受診することが多くなります。

 

入院先の病院から
かかりつけ医へ変更する

 

名医のいる病院や介護者の自宅近くの病院に入院したとしても、紹介状をもらうことで主治医の変更ができます。急性期を乗り越えたならば、慢性期の病状や薬の管理は親が住む場所から無理なく通える範囲の、かかりつけ医への変更が便利です。

 

父は前立腺の病気で一時期、私の家の近くの病院に入院しましたが、退院の際、実家近くの病院を指定して紹介状をもらい、以後はそこで診察や薬の処方などを受けました。盲点は、退院してからの通院なのです。なるべく負担にならないように調整してください。介護タクシーや訪問リハビリテーション、在宅療養支援診療所、薬剤師訪問サービスなど、費用はかかりますが、親だけで在宅での生活を続けたいのであれば選択肢として情報を集めてみてください。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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渋澤 和世

プレジデント社

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