「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母親が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。日本の高齢化は進み、高齢者と後期高齢者という家族構成が珍しくなくなってきた。老いと死、そして生きることを考えていきます。本連載は松原惇子著は『母の老い方観察記録』(海竜社)を抜粋し、再編集したものです。

90歳を超えると最大の関心事は自分の健康のこと

この人も死んだ あの人も死んだ

 

父が亡くなって5年、10年と月日が経つにつれ、近所の人たちも年をとり、身内を亡くす人が続々と出てくるようになった。がんで夫を亡くしひとり暮らしになった70代の主婦、グループホームに入居させていた妻を亡くした80代の男性、こちらもひとり暮らしになった、特養に入っていた105歳の母をやっと見送ることができた息子。息子といっても80代後半の老人だ。まさに、現代日本の縮図である。

 

町内会の回覧板で目につくのは訃報ばかりだ。母は、それを見るたびに「あの人も死んだわ」「へえ、この人も死んだんだ」と、亡くなった人のほとんどが母よりずっと若いというのに、そんなに驚くようすもない。


 
90歳を超えると、最大の関心事は、自分の健康のことなので、他人のことに一喜一憂しなくなるようだ。人の死に驚くのはまだ若い証拠だ。

 

「あなたのお母さん、まだ自転車に乗っているの?」

 

わたしが笑いながらうなずくと、相手から必ずこう言われる。

 

「危ないからやめさせなさいよ。転んだら終わりよ」

 

でも、言ったところで母はやめないので、わたしは余計なご忠告はしないことにしている。母は幼稚園児ではない。自分がやめたいときにやめるはずだ。それに、仮に自転車で骨折しようが、死のうが、それは本人の自由だからだ。

 

 

 

 

松原 惇子
作家
NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク 代表理事

 

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母の老い方観察記録

母の老い方観察記録

松原 惇子

海竜社

『女が家を買うとき』(文藝春秋)で世に出た著者が、「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。 おしゃれ大好き、お出かけ大好…

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