「この人も死んだ…あの人も死んだ…」90歳のリアル

「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母親が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。日本の高齢化は進み、高齢者と後期高齢者という家族構成が珍しくなくなってきた。老いと死、そして生きることを考えていきます。本連載は松原惇子著は『母の老い方観察記録』(海竜社)を抜粋し、再編集したものです。

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夫に先立たれた妻は元気といわれているが…

30万円の絨毯を送りつける

 

あるとき、知人宅を母と二人で訪れる用事があり、恵比寿駅で待ち合わせをした。歩く歩道に乗り、ゆっくり歩いていると、母が突然、不機嫌になった。いつもニコニコしている母の、見たことのない一面を見せられ、わたしはギョっとした。突然、どうしたっていうの?

 

「……あなたたちは、仕事だ仕事だって……何もしてくれない。絨毯を買ってくれるって約束したのも忘れてるでしょ。お母さんのことなんか、どうでもいいのよ」

 

忙しくて忘れていたのは事実だが、そんな言い方しなくてもいいではないか。そのときは母の気持ちを察する余裕がなかった。こちらまで一緒に怒りだし、目も合わせずに知人宅まで行き、気まずい時間を過ごし、もちろん帰りは別々だった。

 

90歳を超えると、最大の関心事は、自分の健康のことなので、他人のことに一喜一憂しなくなるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
90歳を超えると、最大の関心事は、自分の健康のことなので、他人のことに一喜一憂しなくなるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「なんで、そんなこと言われなくちゃいけないのよ。何が不満なのよ」

 

カッカしたその足で新宿の大塚家具に向かい、頭にきたその勢いで30万円の絨毯を購入し、母の家に送りつけた。

 

今思うと、10万円にしておけばよかったと後悔しているが、怒りが金額をつりあげた。

 

一般的には、妻に先立たれた夫はしょぼくれ、夫に先立たれた妻は元気といわれているが、はじめてのひとり暮らしは、そう簡単に切りかえられるものでなかったのだろう。

 

いるべき人がいない寂しさ

 

例は違うが、わたしの先代の飼い猫、めっちゃんが死んだとき、わたしはしばらく、自分のマンションに帰れなかった。「ただいまー」と帰れば「ニャン」と応えてくれる相手がいない。慣れ親しんだ当たり前の風景がない日々は、本当につらかった。

 

猫と暮らしている人はお分かりだろうが、猫は人間にとり精神安定剤みたいな存在だ。

 

猫が亡くなってから、わたしは大事なことに気づいた。それは、ずっとひとり暮らしのつもりでいたが、本当はひとり暮らしではなかったという気づきだ。

 

人間にはいろいろなタイプがあり、人と一緒でないと幸せになれない人、わたしのようにひとりの方が幸せな人、いろいろだが、わたしは人と一緒に住むことが苦手な人間だ。だから、わたしには猫という相棒がピッタリ合っていたのだ。

 

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作家
NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク代表理事

1947年、埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業後、ニューヨーク市立クイーンズカレッジ大学院にてカウンセリングを専攻し修士課程修了。39歳の時『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビュー。3作目の『クロワッサン症候群』はベストセラーになる。
「ひとりの生き方」をテーマに執筆・講演活動を行っており、1998年に、おひとりさまの「終活」を応援する団体、NPO法人SSS(スリーエス)ネットワークを立ち上げる。
著書に『長生き地獄』『老後ひとりぼっち』(SBクリエイティブ)、『人生後半を楽しむシンプル生活のススメ 人生はこれからが本番よ!』『70歳、だから何なの』(海竜社)、ほか多数。

著者紹介

連載元気で長生きするヒント「うちの母はスーパー老人」

母の老い方観察記録

母の老い方観察記録

松原 惇子

海竜社

『女が家を買うとき』(文藝春秋)で世に出た著者が、「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。 おしゃれ大好き、お出かけ大好…

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