目黒のマンションを漏水トラブルで売却して…
お母さんの介護で? いえ、母はピンピンです
人生の先はわからないもので、わたしが65歳のとき、ひとり暮らしの母の家に間借りすることになった。することになったというと理由が母にあるように聞こえるが、わたしが自分で決め、母の承諾もなく転がり込んだというのが正しい言い方だ。
実は、一生住み続けるつもりで購入した目黒のマンションで、漏水トラブルに巻き込まれたことに嫌気がさして、売却することにしたのだ。
大好きな町、大好きなマンションだったので悩んだが、嫌になるとその場にとどまっていられない性格のわたしだ。離婚したときも同じだった。2年間、解決にむけて管理会社や管理組合の理事たちと戦ったが、ラチがあかず去ることにした。
人にとってはたいしたことでないことでも、わたしにとっては大問題。だから、わたしはいつも損をして去ることになる。トラブルに強くないというか、交渉して粘れない性格なのだ。まあ、よくいえば、あっさりしているのだが、「お金より今の気分」を優先する自分には、実は自分でも呆れている。
目黒のマンションを売る? マンションを出る? このわたしの決断に、家族や友達は、わたし以上に驚いた。みんながみんな、間違った決断だと言わんばかりの顔をしたので、それ以後は、自分から引っ越したことを話さなくなった。人の不幸は蜜の味という言葉があるが、都落ちしたととらえた人も多かったようだ。まあ、人の考えを変えることはできないので、どう思っていただいてもいいのだが。
「家賃」の言葉に反応する
「お母さん、緊急事態が発生したのよ。悪いけど一時的に間借りさせてください。その代わり、家賃は払います」
突然の押しかけ宣言にびっくりした母だったが、「家賃」の二文字に反応したのをわたしは見逃さなかった。誰でもお金が入るのはうれしい。とくに、年金収入のみで暮らしている母はなおさらだ。
なぜ、実家に間借りをすることに決めたかというと、以下のとおりだ。売却が突然決まり、2か月で空け渡すことになった。とりあえずの住まいとして、賃貸マンションに移り、落ち着いてから次のマンションを購入することにしたからだ。
ところが、目白に1LDKのかわいい賃貸マンションを見つけて喜んでいたところ、契約日の前日に不動産屋から電話があり、大家さんから契約の白紙撤回を申し渡されたというではないか。