ダラスを本拠とする世界最大(2019年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)によるレポート「賃貸不動産市場その動向と相場 2020年9月期」より一部抜粋し、新型コロナウイルスの影響を受けて、2020年9月期の東京、大阪、名古屋の賃貸オフィス市場はどう変わったかを見ていきます。

東京:企業のコスト抑制に伴い、オフィス需要は減退へ

マスクをして東京のオフィスに通勤するが…(※写真はイメージです/PIXTA)
マスクをして東京のオフィスに通勤するが…(※写真はイメージです/PIXTA)

 

高額賃料物件は苦戦

日本国内の景気動向指数は、5月を底に、2ヵ月連続で改善しており、経済活動の再開は順調に進んでいる。一方、2020年度の企業業績は大幅な悪化が予想され、コスト抑制は喫緊の課題となっている。

 

*グレードについては、記事の最後の資料を参照

 

また、在宅勤務推奨を継続する企業は多く、リモートワークが定着しつつあるなか、オフィスの稼働率が大きく下がっており、賃貸オフィスに対する需要は減退の一途をたどっている。フロアの縮小や、より小規模なオフィスへの移転を決めるなど、コスト抑制への取り組みと合わせて実行に移す企業が大きく増加した。

 

このような動きを示すデータとして、2020年9月期の空室率は、前期(同年6月期)と比べ、グレードAは0.2ポイント上昇の0.9%、Aマイナスは0.1ポイント低下の0.9%、グレードBでは0.1ポイント上昇の0.7%となった。高額賃料物件ほど苦戦しており、手頃な規模と価格の物件へのニーズが高まりつつあるといえよう。

 

◆予想される賃料相場の軟化

2021年上期に竣工を迎える大型新築ビルについては、新型コロナウイルスの感染拡大前に、ほぼテナントを確保しているため、募集面積は残りわずかである。しかし、それ以降に竣工する大型ビルは、大型テナントの誘致に苦戦するであろうことから、賃料相場の軟化が予想される。

 

また、オフィスの分散化やサテライト化の動きも表れつつある。都心部の大きな支店を、営業エリアごとの営業所単位に分散させ、かつ拠点への出勤体制を柔軟にすることで必要なときだけ使えるサテライトオフィスとして、運用を始める事例が見られるようになってきた。“密”を避けつつ、営業効率を高める取り組みが始まっているといえよう。

 

これらの動きは、オーナー側にも大きな影響を与えており、新型コロナウイルス感染拡大前までの強気な姿勢は影を潜め、新規テナントの誘致もさることながら、既存テナントの流出防止のための対策が課題となっている。

 

新型コロナウイルス感染拡大により、働き方が大きく変貌するなかで、オフィスの在り方が問い直されている。従来のオフィスに回帰する企業がある一方で、オフィスに出社する目的を“再定義”しようとしている企業も多くなるなか、今後、テナントに対して、どのようなビルやオフィスを提案していくかが重要になるだろう。

 

※物件検討時の予算の目安(出所:CBRE、2020年9月)
東京オフィス相場表※物件検討時の予算の目安(出所:CBRE、2020年9月)

 

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