拡大続く日本発「アウトバウンド投資」前年同期の3倍に

ロサンゼルスを本拠とする世界最大(2018年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)によるレポート「日本発のアウトバウンド不動産投資 2019年上期」より一部抜粋し、国内投資家によるアウトバウンド投資の最新動向について見ていきます。

アジア太平洋地域発の直接投資は、対前年同期比25%減

アジア太平洋地域発のアウトバウンド投資:投資額は減少も、新たな牽引役が登場

 

アジア太平洋地域の投資家による国外での投資額(直接投資)は、2019年H1は196億ドルとなり、前年同期に比べて25%減少した。中国の投資家が、資本規制により新たな投資を抑える一方で、物件を売却してポートフォリオの調整を進めていることが主因。

 

一方で、ここ数年で存在の高まってきた韓国の投資家による投資額は、アジア太平洋地域の投資家の中でもっとも大きい68億ドルで、前年同期に比べて102%増加した。そのうち、欧州での投資は48億ドルで、全体の7割を占めた。韓国からの投資は年金基金など機関投資家の資金が中心で、分散投資ニーズの高まりや、為替ヘッジコストが対ユーロで有利であること等が背景にあると考えられる。

 

[図表1]アジアの投資家によるクロスボーダー投資投資家国別投資額

 

[図表2]アジアの投資家によるクロスボーダー投資2019年H1

日本発の直接投資は、対前年同期比229%増加

日本発のアウトバウンド投資:アジア域内の投資額が米州を超える

 

今期、日本発のアウトバウンド投資は19億ドル、前年同期に比べて229%増加した。投資先としてもっとも投資額(直接投資)が大きかったのはアジア(9.3億ドル)、次いで米州(9億ドル)だった。

 

アジア域内の投資先としてはこれまではシンガポールや韓国だったが、中国における投資にも拡大。アジア域内における投資は、不動産ファンドの運用のみならず、収益不動産のリノベーション事業の拡大を目的とする取引なども見られた。

 

[図表3]日本の投資家によるアウトバウンド投資

 

[図表4]日本の投資家によるアウトバウンド投資投資先国別投資額割合  

 

日本発のアウトバウンド投資:不動産ファンドを中心に投資額は増加

 

投資主体別による投資額がもっとも大きかったのは「不動産ファンド」の8億2000万ドルで、不動産ファンドによる半期の投資額としては2005年以来最大となった。機関投資家の投資資金の受け皿となるべく、新たなファンドの組成が複数見られた。一方、アセットタイプ別では、オフィスが全体の66%を占めた。

 

[図表5]日本の投資家によるアウトバウンド投資投資主体別投資額

 

機関投資家の間接投資:主要投資家による2018以降の投資額は約70億ドルと推定

 

今期、日本の不動産ファンドによる取得額(直接投資)は大きく増加。機関投資家の資金が流入していることが背景にあると考えられる。CBREでは機関投資家による間接投資(ファンドおよびファンド・オブ・ファンズでの投資など)については2018年から2020年にかけて140億ドル程度と見込んでいる。

 

今回、主要な機関投資家の依託先であるゲートキーパーの動向から推計した結果、2018年から今までに投資された額は70億ドルを超えた可能性があると考えられる。

 

欧州マーケット:英国への関心は高い

 

今期、欧州で確認できた日本発のアウトバウンド投資(取引)は1件にとどまった。英国での投資は、EU離脱問題が2016年に発生して以降、ほとんど見られなくなっている。しかし、投資先として英国を検討している日本の投資家は少なくない。

 

CBREが2019年4月に日本の投資家に対して実施した調査によると、投資予定の対象国として英国を挙げた回答者は全体の33%で、米国(76%)に次いで2番目に多かった。英国は、米国と同じく、市場規模の大きさや流動性の高さが評価されている。

 

また、2018年以降も、大手デベロッパーによる英国の企業買収、住宅市場への参入計画、オフィス開発計画等が散見されている。EU離脱の道筋が具体化すれば、不動産の直接投資もデベロッパーを中心に再び本格化する可能性がある。

 

開発トレンド:投資活動は引き続き活発

 

今期、発表された海外の開発プロジェクト件数は、前年同期とほぼ同じ水準だった。開発プロジェクトの約8割(件数ベース)がデベロッパーによるもので、約7割がアジア域内でのプロジェクトである。用途の半数以上が住宅であることも、これまでのトレンドと大きく変わっていない。

 

 まとめ 

為替ヘッジコストや景気後退に対する懸念が高まるなか、アウトバウンド投資に対してやや慎重になる機関投資家も一部にみられている。そのため、今後の拡大ペースはやや鈍化する可能性もある。

 

ただし、日本発のアウトバウンド投資が堅調な背景として、①デベロッパーや商社による、海外ビジネス拡大の意欲の高さ、②インカムリターンを求める機関投資家が不動産投資における地域的な多様性を求めていること、などが挙げられる。これらのトレンドやニーズが大きく変わることはないと考えられるため、アウトバウンド不動産投資は今後も拡大傾向が続くだろう

 

 

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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2018年の売上ベース)。全世界で90,000人を超える従業員、約480カ所以上の拠点(系列会社および提携先は除く)を有し、投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。

写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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