ダラスを本拠とする世界最大(2019年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)によるレポート「賃貸不動産市場その動向と相場 2020年9月期」より一部抜粋し、新型コロナウイルスの影響を受けて、2020年9月期の東京、大阪、名古屋の賃貸オフィス市場はどう変わったかを見ていきます。
大阪:中心部の空室在庫は少ないが、「空室率」は上昇
◆梅田でも空室率上昇
2020年9月期の大阪グレードAの空室率は0.6%と、対前期(同年6月期)比0.1ポイント上昇した。大阪グレードBの空室率は、前期の0.6%から今期は1.1%と、グレードA同様に上昇となった。引き続き低水準ではあるが、4月以降のコロナ禍の影響により、解約に踏み切るテナントが徐々に発生してきている。また、テナントサイドが、移転計画の検討を一時的にストップするなど、空室の消化スピードを遅らせる要因も影響している。
オールグレードのエリア別で見ると、「梅田」エリアの空室率は0.6%で、対前期比0.5ポイント上昇した。ただし、依然、空室は非常に少なく、「淀屋橋」「堂島」「中之島」エリアも、前期からの変動幅は少ない。「本町」エリアは、前期の1.1%から今期は2.1%、「新大阪」エリアは、前期の0.9%から今期は2.1%と、数値は依然として低水準にあるものの、変動幅としては、他エリアに比べて大きかった。
全体としては、大阪オフィスマーケット内の中心エリアすべてで、依然、空室在庫の少ない状況が続いている。なお、中心部以外においても中心部同様に依然として空室は限定的である。
◆コロナ禍の今後の動向
新型コロナウイルスの影響により、数値としては限定的であるが、空室率は上昇傾向となった。解約情報の多くは、依然小規模なもので、コロナ禍の影響を避けられない業種や、コロナ禍以前からオフィスの縮小検討をしていたテナントが、躊躇なく解約に踏み切ったケースなどである。
また、「梅田」の中心エリアのグレードAビルでも、空室が見受けられるようになった。コロナ禍が長期化することで、テナントサイドの縮小検討が、業種・企業規模を問わず、範囲を広げて影響を及ぼす可能性がある。
いずれにしても、多くの企業が、今後の働き方に伴うオフィス環境整備、リモートワーク導入の具体的な施策を検討、検証している状況であるといえる。
2021年の新規供給は限定的であるため、今後、移転等の実行フェーズに入る企業にとっては、最新のオフィス状況(空室率や賃料相場等)を把握し、速やかに意思決定をすることが重要である。
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