灘高→東大理Ⅲ→東大医学部卒。それは、日本の偏差値トップの子どもだけが許された、誰もがうらやむ超・エリートコースである。しかし、東大医学部卒の医師が、名医や素晴らしい研究者となり、成功した人生を歩むとは限らないのも事実。自らが灘高、東大医学部卒業した精神科医の和田秀樹氏と、医療問題を抉り続ける気鋭の医療ジャーナリストの鳥集徹氏が「東大医学部」について語る。本連載は和田秀樹・鳥集徹著『東大医学部』(ブックマン社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

東大教授が有利な点は役人の知り合いが多くなること

鳥集 ただ、東京以外に勤務する多忙な教授からしてみれば、いくらアゴアシつきであっても、面倒な厚労省とか文科省との折衝や会議のたびにいちいち上京するのは面倒ではないですか。だから、東大の教授にやってほしいという面はあるみたいですね。

 

和田 東大教授が有利な点は、自ずと中央の役人の知り合いが多くなることです。各省庁主催の勉強会レベルなら、今、このときも何かしらが開かれており、アルバイト感覚で東大医学部の教授が話しているはずですよ。

 

今回のコロナ禍で、本来、科学的な根拠や専門知識を持って、政府に政策を立案する立場である厚労省医政局*の医系技官の無能ぶりがいみじくも露呈されたわけですが……。ただ、医系技官は、慶応出身がわりと多いのです。しかし、医系技官が次官になった事例はないと思います。医政局長くらいまでで、その上のポストには必ず東大卒がいます。

 

厚労省医政局の医系技官
医政局は、医療政策を所轄する、厚労省内部の部局の一つ。医系技官は、厚労省のHP によると、「人々の健康を守るため、医師免許・歯科医師免許を有し、専門知識をもって保健医療に関わる制度づくりの中心となって活躍する技術系行政官のことです」とある。医師としての専門性、行政官としての専門性だけでなく、高い志、広い視野、豊かな人間性、コミュニケーション能力などの「基礎素養」も重要とされている。

 

鳥集 確かに、事務次官は東大法学部出身の人が多いですよね。

 

和田 東大医学部もそうですが、良きにつけ悪しきにつけ、受験競争に最も勝利した人たちが入ってくるわけだから、やたらと競争が好きで、ヒエラルキーのなかでしか生きられない人が多いのです。日本の医学が遅々として発展しないのは、そんな東大医学部卒のメンタリティがはびこっている医局が存在するからです。権威に凝り固まったシステムだから、横のつながりが希薄なために、日本は臓器別・縦割り診療の弊害がどんどん出てしまいました。

 

鳥集 昔は、医学部を卒業後すると、ほとんどの人は進路とする診療科を決めて、母校の医局に入局しました。そのため、消化器外科を選んだ医師は、他の診療科について深く学ぶこともなく、消化器外科の医局員としてのレールが敷かれました。消化器外科の場合、メインの疾患として大学病院でその医師が学ぶのは、胃がんや大腸がんなどになります。

 

専門領域が細分化されている大学病院では、消化器外科の医師が、ありふれた感染症や糖尿病、高血圧などの内科の病気、捻挫、骨折などの整形外科の分野、ましてやうつ病や統合失調症などの精神科の疾患を学ぶ環境がなかったのです。しかも、体系的な臨床教育は行われず、まさに「俺の背中を見て覚えろ」といった相撲部屋の親方のような教授についたら、その教授のやり方しかわからなくなっていたのです。

 

そういう環境で育った医師は、飛行機や新幹線のなかで急病人が出ても、消化器以外の疾患はわからないから、自信が持てずに医師だと名乗り出ることもできなくなる。そんなことでは、医師と胸を張って言えませんよね。医局講座制は、このような「専門バカ」を大量生産したと言われています。他に和田さんは、臓器別・縦割り診療に、具体的にどんな弊害があると思いますか?

 

和田 人間、歳をとればとるほど、一度に3つも4つも病気をすることが多くなります。骨粗鬆症があり、高血圧があり、軽い糖尿病も指摘されて、さらに心電図を調べたら狭心症も見つかったなんていうことはよくある話です。

 

そうなったとき、今の臓器別・縦割り医療だと、それぞれの専門医がバラバラに薬を出すわけだから、すぐに15種類くらい処方されてしまうわけですよ。こうなるともう、薬の効果よりも多剤投与の副作用がデメリットになります。ですから、先の秋下氏の『薬は5種類まで』というのは、そのなかに骨粗鬆症の意味のない薬を入れるという以外はとても素晴らしい提案なのです。

 

日本の人口構成が60歳未満の若い層で大半を占められていた時代は臓器別・縦割り診療のほうが国民の健康を維持できたかもしれませんが、現在の超高齢社会においては、弊害が大き過ぎるのです。しかし、そんな俯瞰的にものを考えられる人間、本気で患者さんを救おうと思って医師を目指す人間は、東大医学部を筆頭とするエリート大学の医学部にはほとんど残れないのが現状です。

 

和田秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック院長 精神科医

 

鳥集徹著
ジャーナリスト

 

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